トランプ政権2期目初の国家安全保障戦略、インド太平洋を地政学的戦場と位置づけ
(米国)
ニューヨーク発
2025年12月15日
米国のトランプ政権は12月5日、国家安全保障戦略
を発表した(2025年12月15日記事参照)。
地域別の戦略では、インド太平洋に対して、「既に、そして今後も、次世紀の主要な経済的・地政学的戦場の1つであり続ける」との認識を示し、「米国が繁栄するためには、われわれはこの地域での競争に勝利しなければならない」と記載した。中国に対しては、「経済関係を再調整し、相互主義と公平性を優先して、米国の経済的自立を回復させる」として、中国との貿易は機微な分野以外で行うべきとの認識を示した。略奪的経済慣行への対抗については、同盟国との連携の重要性を強調した。そのほか、インドに対しては、オーストラリア・日本・米国とのクアッドを通じた安全保障面での協力強化に言及した。
欧州に対しては、同地域が直面する危機として、EUやその他の超国家機関の活動による政治的自由と主権の侵害、大陸を変容させ紛争を生む移民政策、言論の自由の検閲と政治的反対勢力の弾圧、出生率の急落、国民的アイデンティティーと自信の喪失、などを指摘した。その上で、欧州は「戦略的・文化的に米国にとって依然として極めて重要」であるため、「われわれの目標は、欧州が現在の方針を修正するよう支援すること」と記載した。
米通商専門誌インサイドUSトレード(12月5日)は、トランプ政権が発表した国家安全保障戦略に対して、「経済的圧力と外交を組み合わせ、他国に対して、米国が最良のパートナーであること、米国の商品・サービスが他国より優れていることを示し、西半球で米国を不利な立場に追いやろうとする国の影響力を弱めることを目的としている」と評価した。
一方で、首都ワシントンの政策動向に詳しいコンサルタントは、「中国とロシアがもたらす競争と国家安全保障上の課題は軽視されている」と指摘した(注)。例えば中国については、その影響力に対抗する姿勢を示しながらも、「敵対国」ではなく「準対等国」と位置付けていると指摘した。また本戦略は、「米国の外交政策に実質的な変化をもたらさない」とも指摘し、その理由に、指導的立場にある共和党議員が中国やロシアに対する扱いに反対していること、MAGA(Make America Great Again)連合内でも合意が得られていないことを挙げた。
(注)ジェトロに対するメールでの報告(2025年12月8日)。
(赤平大寿)
(米国)
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