一般関税率大幅引き上げの輸出入関税法改正案が可決

(メキシコ)

調査部米州課

2025年12月12日

メキシコ連邦上院は12月10日、一般(MFN)関税率を大幅に引き上げる内容の、輸出入関税法(LIGIE)改正案を可決した。同法案は行政府が2026年の歳入関連法案の一環として2025年9月上旬に国会に提出した後(2025年9月16日記事参照)、国内外からの批判が相次いだこともあり、連邦下院の経済通商競争委員会が最終法案策定期限を延長し、一時凍結となっていた(2025年11月6日記事参照)。11月26日には鉄鋼や自動車などの業界団体との作業部会を実施し、一部の品目について関税率の引き上げ幅を縮小するなどの変更を行った上で、12月8日に下院で可決されていた。今後、行政府による連邦官報での公示を経て、2026年1月1日から新しい関税率が適用となる。

関税率の引き上げ対象となっているのは合計1,463品目(HSコード8桁別)で、繊維・履物や鉄鋼・同製品などの従来のセンシティブ品目に加え、自動車や自動車部品、プラスチック製品なども含まれている。9月に提出された原案から合計数に変更はないが、115品目が入れ替わっており、注意が必要だ(添付資料表参照)。原案から引き続き対象となっている品目について、経済通商競争委員会のミゲル・サリム委員長は、974品目の引き上げ幅を平均28%縮小したと発言している(「エル・エコノミスタ」紙など現地報道)。ただ、鉄鋼・鉄鋼製品のほとんどは関税率が維持されているほか、乗用車も引き続き50%への引き上げとなっている。

MFN税率引き上げは、メキシコと自由貿易協定(FTA)を締結する国の原産品に対しては影響を及ぼさない。日本はメキシコとの間で日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)を締結しているため、日本の原産品にはそれらの協定に基づく税率(大半が0%)が適用される(注)。

一方で、メキシコとFTAを締結していない中国やタイからの輸入品には、現行よりも高い税率が適用されることになる。メキシコ競争力研究所(IMCO)のオスカル・オカンポ氏は、対象品目が広範囲にわたるため、メキシコのサプライチェーンにおける生産コストを上昇させ、インフレ圧力が高まる可能性があると指摘した(「エル・フィナンシエロ」紙12月10日付)。

(注)FTAの特恵税率の適用を受けるためには、原産地証明書の取得など、所定の手続きを行う必要がある。日本からの輸出でも、FTAを利用せず輸出した場合はMFN税率が適用される。

(加藤遥平)

(メキシコ)

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