R&D振興新5カ年計画、半導体と高齢化対応に焦点
(シンガポール)
シンガポール発
2025年12月12日
シンガポールのリー・シェンロン上級相は12月5日、官民合同の研究・革新・企業評議会(RIEC)が策定した2026年4月~2030年3月の新5カ年研究開発(R&D)計画「研究・イノベーション・エンタープライズ2030年計画(RIE2030)
」を発表した。RIEの予算規模は370億シンガポール・ドル(約4兆4,400億円、Sドル、1Sドル=約120円)と、GDPの約1%規模となるR&Dの振興予算水準を維持する。まず、半導体産業と人口高齢化のR&Dに重点的に取り組む。
リー上級相によると、2025年までの計画「RIE2025」で優先研究分野とした(1)製造・貿易・コネクティビティー、(2)健康・人の潜在能力の向上、(3)都市ソリューション・環境変化に対応した持続可能な技術、(4)スマート国家・デジタルエコノミーの4分野への投資を、RIE2030でも継続する(2020年12月16日記事参照)。2025年12月6日付ビジネス・タイムズ紙によると、予算総額370億Sドルのうち29%に相当する約108億Sドルが、同4分野に投じられる。また、そのうち、30億Sドルが新たな戦略的プログラム「RIEフラグシップス」と「RIEグランド・チャレンジ」に充てられる予定だ。
両プログラムはそれぞれ、2分野でのR&D強化を優先的に進める予定だ。RIEフラグシップスの第1弾は、半導体産業がテーマに設定された。同上級相は、「シンガポールを業界における戦略的に重要なR&D拠点とすることが目標だ」と述べた。高付加価値な企業のR&Dと製造業活動の誘致と拡大を支援し、同分野のスタートアップや国際競争力のある地場企業の成長も後押しする。
また、RIEグランド・チャレンジの第1弾は、「健康寿命の延伸と充実した高齢化の実現」がテーマに設定された。同国では2030年までに人口の4分の1が65歳以上の高齢者となり、高齢化が急速に進行している(2025年10月6日記事参照)。同上級相は、高齢者の認知機能や身体機能の低下の抑制に取り組む方針を示した。また、「医療や社会環境、人工知能(AI)、技術革新を通じて、高齢者の脳の健康や身体機能を維持するための新たな方法の開発を目指す」と語った。
両プログラムの第2弾の内容については現在、協議中で、後日発表予定だ。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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