欧州委、COP30の最終合意文書採択に向けた努力を評価
(EU)
ブリュッセル発
2025年12月17日
欧州委員会は11月22日、ブラジル・ベレンで開催された国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)で採択された「グローバル・ムチラオ決定」(2025年12月4日記事参照)の合意確保のため、EUの交渉担当が科学的根拠、多国間主義に基づき、参加国パートナーと最大の協力を行ったと評価した(プレスリリース
)。
政治専門紙「ポリティコ」が12月2日に開催したサミット
に登壇した欧州委のウォプケ・フックストラ委員(気候・ネットゼロ・グリーン成長、税制担当)は、合意内容に関し、EUの努力が足りなかったとの指摘はあるものの、各国の温室効果ガス(GHG)排出削減努力と途上国への気候変動対策資金への貢献は双方が履行されなければ合意はないと主張し、合意に至ったと説明した。また、気候中立は、気候変動対策と競争力・自立性の両立が達成の鍵となると強調した。
同じくサミットに参加した欧州議会の交渉担当者は、多国間主義の合意がなされなければ、トランプ政権の思惑どおり(2025年11月20日記事参照)となったとし、合意形成の重要性を強調。一般的に災害による損失の費用は、防災対策費用の3倍といわれており、この観点からも各国のGHG排出削減努力は必要であると述べた。また、化石燃料の段階的廃止は、合意書に含まれなかったものの、80カ国以上のイニシアチブを通じた進展を確保した点を評価した(プレスリリース
)。
EU政策を専門とするベルギーのシンクタンクである欧州政策センター(EPC)が12月9日に開催したセミナー
で、欧州委の気候行動総局の担当者は、パリ協定に基づく2035年のGHG排出削減目標(国が決定する貢献:NDC)の提出は参加国の3分の2にとどまり、排出削減は2019年比で12%減にとどまり、目標である気温上昇を1.5度に抑えるには足りないことが最大の懸念であると指摘。COP30で期待していた削減に向けた具体的な実行に関する議論には至らなかったが、初めて119の締約国が2024年内に隔年透明性報告書(Biennial Transparency Report)
を提出し、目標とのギャップを特定。今後、実装を加速する国際的なプラットフォーム(Global Implementation Accelerator)が合意書に含まれ、実行に向けた動きへの各国の期待を表した。
(薮中愛子)
(EU)
ビジネス短信 6d24fe102dc27de6




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