カナダ中銀、政策金利を2.25%に据え置き、不確実性高まる中で現行水準を維持
(カナダ、米国)
トロント発
2025年12月12日
カナダ中央銀行は12月10日、政策金利を2.25%に据え置くと発表
した(政策金利レート推移参照
)。金利の据え置きは2会合ぶり。
中銀は、米国による関税の影響とカナダ経済の回復力、インフレ圧力の抑制などを主な要因として挙げた。発表の主なポイントは次のとおり。
〇米国による関税と通商政策がカナダ経済に与える不透明感
鉄鋼、アルミニウム、自動車、木材などに対する米国の関税は、関連産業に打撃を与えており、通商政策の不透明感が企業の設備投資全般を抑制している。ただし、現時点ではカナダ経済全体はおおむね回復力を示している。
ティフ・マックレム中銀総裁は「米国の通商政策や、カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA、注)の見直しが企業活動に不安を与えているほか、高関税への対応も課題」と述べ、貿易や四半期GDPの変動が大きく、経済の基調を見極めるのが難しい状況と言及した。
〇経済成長の動向と雇用情勢
第3四半期のGDPは2.6%増と予想を上回ったが(2025年12月4日記事参照)、貿易の変動による一時的要因が大きく、最終国内需要は横ばいだった。第4四半期は国内需要の回復が見込まれるものの、純輸出の減少でGDPは弱含みとなる可能性がある。成長は2026年に持ち直す見通しだが、不確実性は高く、貿易の振れによる変動が続くと予想される。
労働市場は、直近3カ月で雇用が堅調に増加し、失業率は11月に6.5%へ低下した。一方、貿易関連部門の雇用は依然弱く、経済全体で採用意欲は抑制的であり、改善ペースは限定的とみられる。
〇インフレ動向:CPI鈍化と今後の見通し
インフレ圧力は抑制されており、10月の消費者物価指数(CPI)は、ガソリン価格の下落や食品価格の上昇ペースの減速が要因で2.2%上昇と鈍化した(2025年11月27日記事参照)。CPI上昇率は1年以上にわたり2%目標近辺を維持している。今後は、2024年の連邦物品サービス税(GST)と統一売上税(HST)の免除(2024年12月19日記事参照)の影響で、総合インフレ率が一時的に高まる見込みだが、こうした変動を除けば、経済の余力が貿易再構成に伴うコスト圧力をおおむね相殺し、2%目標近辺を維持する見通し。
発表を受けて同日、CIBCキャピタルマーケッツのエグゼクティブ・ディレクター兼シニア・エコノミストのキャサリン・ジャッジ氏は「貿易の進展や過去の利下げの効果が来年の成長回復を支える一方、経済には依然として余力が残っており、インフレを脅かす要因にはならない」と述べ、政策金利が2026年末まで2.25%で据え置きとなる公算が大きいと予測した(CIBCエコノミックフラッシュ12月10日)。
中銀の次回の政策金利と、経済見通しを示す金融政策報告書の発表は、2026年1月28日に予定されている。
(注)米国ではUSMCA、メキシコではT-mecと呼ばれる。
(井口まゆ子)
(カナダ、米国)
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