ムーディーズ、ラオス政府の信用格付けを引き上げ

(ラオス)

ビエンチャン発

2025年12月10日

米国の格付け会社ムーディーズは12月3日、ラオス政府の長期発行体格付け(現地通貨建ておよび外貨建て債務)を「Caa3」から「Caa2」へと引き上げ、見通しを「安定的」とした(注)。同社は2022年6月に「Caa2」から「Caa3」へ格下げしていたが(2022年6月22日記事参照)、今回の格上げは、国際資本市場へのアクセス回復とマクロ経済の安定により、対外商務債務のデフォルトリスクが大幅に低下したことを評価したものだ。

今回改善した最大の要因は、ラオス政府が11月に発行した3億ドルの米ドル建て国際債券(5年物、固定金利11.25%)による国際市場アクセスの改善だ。この資金により、2025年12月に満期を迎えるタイ債券市場での債務償還(1億6,200万ドル)に見通しが立ち、流動性リスクが緩和された。ラオスは2023年以降、タイ市場での国債発行が困難になっていた(2023年10月25日記事「ラオスの貿易投資年報 2024年度版」参照)。なお、商業債の償還負担は2025年をピークに以降は減少する見通しだ。

実体経済の改善も格上げを後押しした。インフレ率は2024年初頭に20%超だったが、金融引き締めと為替安定化策により、2025年10月時点で4.0%まで低下した。現地通貨キープに対する下落圧力も和らいだ。さらに、特筆すべきは外貨準備高の回復である。外貨準備は2025年7月末には27億ドルに達し、前年同月末比で約2倍に増加した。経常収支の黒字化や海外直接投資の流入、電力輸出や観光・運輸収入の増加が寄与した。公共・公的保証債務の約85%が外貨建てであるラオスにとって、通貨安定と外貨確保は債務持続可能性を支える鍵となる。

ムーディーズはラオスの「Caa2」について、ガバナンスの脆弱(ぜいじゃく)性と、短期的な国内資金調達への依存、対外債務返済の約40%を占める中国への依存度の高さを懸念材料として挙げた。中国との2国間債務は、元本返済猶予の継続が前提だが、条件や透明性には不透明さが残ると指摘した。

なお、他の信用格付け会社について、フィッチ・レーティングスは2025年10月に「CCC+」と評価し、スタンダード・アンド・プアーズ・グローバル(S&P)は「CCC+」、見通しを「ポジティブ」としている(2025年10月27日記事参照)。

(注)ムーディーズのグローバル・スケール長期格付けでは、Aaa、Aa、A、Baa、Ba、B、Caa、Ca、Cの9段階の格付けを行っている。Aaaは信用力が最も高く、信用リスクが最低水準な債務、Bは投機的で信用リスクが高い債務、Caaは投機的で安全性が低く信用リスクが極めて高い債務としている。また、AaからCaaまでの格付けには1、2、3の数字を付加し、それぞれ文字格付け内の上位、中位、下位を示す。また、見通しが「安定的」とは、中期的に格付けが変更される可能性は低いことを示唆する。

(山田健一郎)

(ラオス)

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