英国政府、CBAM導入に関する法案への意見公募を開始
(英国)
ロンドン発
2025年05月07日
英国政府は4月24日、炭素国境調整メカニズム(CBAM、注1)に関する法案について意見公募の実施を発表した。法案では、賦課金の範囲や算出方法、管理方法などを定めている。なお、法案が政策意図に適合していることを確認するためのものであり、政策設計に関する意見公募ではないとしている。意見公募は2025年7月3日まで実施する。
政府は併せて、関係者の本意見公募への参加を支援するため、CBAMに関する政策情報のアップデートも公表した。2024年3月から実施していた意見公募(2024年3月28日記事参照)に対する政府回答(2024年10月発表)
の内容を踏まえたものになっている。
英国のCBAMは、2027年1月から導入される。導入時の対象セクターはアルミニウム、セメント、肥料、水素、鉄鋼となっており、EUのCBAMと異なり、電力は対象となっていない(対象製品の詳細は英国政府ウェブサイト参照)。2024年3月の意見公募の段階ではガラスとセラミックも候補として挙げられていたものの、2027年の開始時点では対象外となった。
CBAMへの登録が必要となる事業者は、過去12カ月間に輸入した、もしくは今後30日間に輸入を予定している対象製品の総額が5万ポンド(約965万円、1ポンド=約193円)以上の事業者。当初案では1万ポンドだったものの、中小企業の負担軽減のために引き上げがなされている。
賦課金は、輸入される製品に含まれる体化排出量(注2)に基づき算出される。算出に当たっては当該製品に用いられる特定の前駆体の体化排出量も考慮する。政府は具体的な計測方法や対象となる前駆体については、導入に先立ち委任立法で定める予定としている。また、実際の排出量に関する情報の入手が難しい場合に利用する、排出量のデフォルト値(既定値)についても委任立法で設定する。炭素価格については、英国排出量取引制度(UK ETS)、炭素価格支援(CPS)など国内の価格メカニズムを参照するとしつつ、当該セクターに対するUK ETSの無償割当を考慮して調整を行い四半期ごとに設定するとしている。
申告・支払いについては、EUのCBAMのように証書の購入ではなく、オンラインで確定申告を行い支払う。2027年分については年間分の報告・支払いを2028年5月31日までに、2028年1月1日以降については四半期ごとに、2カ月以内に報告・支払いを行う必要がある。
(注1)UK CBAMやUK ETSについては2024年5月27日付地域分析レポート「英国カーボンプライシング政策の今」も参照のこと。
(注2)輸入された対象製品の生産に伴う(製品に含まれる)温室効果ガスの排出量を指し、対象製品の生産時に排出される温室効果ガス(直接排出)と、生産工程で消費される電力の発電に伴って排出される温室効果ガス(間接排出)の2種類に分けられる。
(バリオ純枝)
(英国)
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