インド準備銀、政策金利を5.25%に引き下げ、物価安定で緩和余地が拡大

(インド)

ムンバイ発

2025年12月09日

インド準備銀行(RBI、中央銀行)は12月3~5日に金融政策決定会合(MPC)を開催し、政策金利(レポレート)を25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げて5.25%とすることを全会一致で決定した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(添付資料図参照)。金融政策スタンスは、引き続き「中立(neutral)」を維持した。利下げは2025年6月以来3会合ぶり(2025年6月11日記事参照)で、2025年の累計利下げ幅は125bpとなった。

RBIは声明で、2025年度第2四半期(2025年7〜9月)の実質GDP成長率が前年度同期比8.2%と、6四半期ぶりの高水準に達したと指摘。所得税および物品・サービス税(GST)税率の合理化、原油価格の下落、公共投資の前倒し執行、インフレ率の低下に基づく緩和的な金融環境が内需を押し上げたと分析している。2025年度(2025年4月〜2026年3月)の実質GDP成長率見通しは7.3%で、第3四半期(2025年10〜12月)が7.0%、第4四半期(2026年1〜3月)が6.5%、2026年度第1四半期(2026年4〜6月)が6.7%、第2四半期(2026年7~9月)が6.8%と予測した。

一方、2025年度第2四半期のCPI上昇率は平均1.7%とRBIが定めるインフレ中期目標(2~6%)の下限を下回り、10月は0.3%と統計開始以来の最低水準となるなど、物価は予想以上に落ち着いている(2025年11月18日記事参照)。RBIは2025年度のCPI見通しを2.0%へ下方修正(前回2.6%)し、2026年度前半は3.9〜4.0%とし、中期目標近辺へ収れんすると見込んでいる。

サンジャイ・マルホトラ総裁は声明で、「低インフレと成長の両立が続いており、いわゆるゴルディロックス(注1)に近い環境にある」と述べ、政策余地が拡大しているとの認識を示した。また、外部環境には先行きの下振れリスクが残る一方、現在進行中の貿易交渉が早期に妥結すれば上振れ要因となる可能性に触れ、先行きのリスクはおおむね均衡しているとした。

またRBIは、市場への流動性供給のため、1兆ルピー(約1兆7,000億円、1ルピー=約1.7円)規模の公開市場操作(注2)に加え、50億ドル規模の為替スワップ(注3)を実施することを決定した。

(注1)インフレが低位で成長が安定し、過熱も停滞もしない「適温」経済を指す。

(注2)中央銀行が金融市場で国債や短期証券などを売買し、市場の資金量(マネーサプライ)や金利を調整する政策手段を指す。

(注3)外貨と自国通貨を一定期間交換し、満期時に元本を再交換する金融取引。短期的な流動性供給と過度な為替変動の抑制を目的とする。

(篠田正大)

(インド)

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