10月のインフレ率は前年同月比0.25%に低下、現行CPI系列で過去最低

(インド)

ムンバイ発

2025年11月18日

インド統計・計画実施省(MoSPI)が11月12日に公表した10月の全国ベースの消費者物価指数(CPI、注1)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は197.3ポイント(速報値)、前年同月比の上昇率は0.25%で、9月の1.44%(速報値は1.54%)から1.19ポイント低下した。上昇率は現行CPI系列(2012年基準)導入以降で最も低い水準となった。MoSPIはインフレ率低下の主要因として、物品・サービス税(GST)税率引き下げや、ベース効果(前年同月の水準が高かったことによる押し下げ要因)、食料品価格の下落などを指摘している(添付資料図参照)。

食品のインフレ率(注2)は前年同月比マイナス5.02%と、9月(マイナス2.33%)から2.69ポイント低下し、食品インフレ率としても現行系列の過去最低となった。食品分野では、野菜(マイナス27.57%)、豆類(マイナス16.15%)の大幅な下落が全体の押し下げにつながった一方、果物(6.69%)、油脂(11.17%)、卵(1.33%)などは上昇した。

地域別のインフレ率は都市部が0.88%、農村部がマイナス0.25%だった。

市場関係者の間では、食品価格の下落を中心とした物価安定が続く一方、今後の天候動向やベース効果の薄れによる影響を慎重に見極める必要があるとの声が出ている。

地場の格付け会社ICRAのチーフエコノミスト、アディティ・ナヤル氏は「10月の総合と、食品インフレ率の大幅な低下には、2024年10月の高い物価水準が影響するベース効果が大きく寄与した」と指摘した。その上で、「足元のインフレ動向に加えて、金融政策決定会合(MPC)のハト派的(金融緩和的)な姿勢を踏まえると、12月に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げが実施される可能性がある」との見方を示した(「ミント」紙11月12日)。

同じく地場の格付け会社CareEdge Ratingsのチーフエコノミスト、ラジャニ・シンハ氏もベース効果について、同様の指摘をしつつ、「一部地域では過剰な降雨や洪水も見られ、今後の農業生産や供給に与える影響には注意が必要だ」と述べ、モンスーンの地域的な偏りが今後の上振れリスクになり得るとの見方を示している(「ファイナンシャル・エクスプレス」紙11月13日)。

(注1)全国ベースのCPIは、基準年の2012年を100とし、農村部と都市部の各CPIを加重平均したもの。

(注2)ここでは、CFPI(消費者食品物価指数)のインフレ率を記載。

(篠田正大)

(インド)

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