ドイツ・フランス主導で欧州デジタル主権サミット開催、自律戦略を加速

(ドイツ、フランス)

ベルリン発

2025年12月01日

「欧州デジタル主権サミット」が11月18日にドイツのベルリンで開催された。2025年8月にフランス・トゥーロンで開かれた独仏合同閣議(2025年9月5日記事参照)での合意を受けて、両政府による主導で開催された。サミットは、欧州のデジタル主権の強化を目指す取り組みとして企画され、欧州機関や加盟各国などから900人超が参加し、議論が交わされた。

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は「欧州は米国と中国にこの分野を譲ってはならない。欧州は力を合わせて、独自のデジタルの道を進まねばならない」と述べ、デジタル分野での自律を訴えた。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「デジタル主権サミットは、欧州はデジタル時代において主導的役割を担う資質を備えているという明確なシグナルを発している」と語った。

サミットでは、「欧州の主権とグローバル競争力のためのスタートアップ・投資家・政府の連携」「クラウドとデータ主権」「欧州デジタルIDウォレット(2023年11月13日記事参照)」「デジタル主権を支える公正な市場」などが議題となった。また、本サミットを通じて、独仏共同タスクフォース創設や、独仏企業および欧州企業による120億ユーロ超の投資・提携が発表された。ドイツのソフトウエア大手SAPとフランスの人工知能(AI)先端企業ミストラルAIの協業拡大も公表された。

ドイツ主要メディアは、総じて厳しい視線を向けた。「フランクフルター・アルゲマイネ」紙は「ベルリンでの欧州デジタルサミットは貧弱な内容だった」と報じ、デジタル主権をテーマにしつつも、実態は経済論に偏重し、米国テック企業を利することになる規制緩和をドイツ側が主張するものだった、と批判した(11月22日)。経済紙「ハンデルスブラット」は、本サミットで予告された投資額の規模は米国に比べれば小さく、内容も意思表示にとどまる懸念があるという業界関係者の批判的な声を紹介。さらに同紙は、ドイツ政府は、政府が欧州製デジタル製品の主要顧客として市場を支える役割を果たす「アンカー・クライアント」として欧州製品を優先調達することには前向きだが、EU域内産品の調達・使用を優先または義務付ける「バイ・ヨーロピアン」規定導入に対しては慎重姿勢を示しているとし、その一方で、フランス政府は「バイ・ヨーロピアン」規定にも前向きで、両国の姿勢には温度差も見られる、と報じた(11月18日)。

(中山裕貴)

(ドイツ、フランス)

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