フランス、ドイツとの協力強化の経済行動計画を発表

(フランス、ドイツ、スペイン、ポルトガル)

パリ発

2025年09月05日

フランス政府は8月29日、フランス南部のトゥーロンで、ドイツとの第25回仏独合同閣議を開催し、エネルギー、貿易と経済安全保障、産業、先端技術、デジタル主権、競争力、単一市場の簡素化の分野などでフランスとドイツの協力を深化させる仏独経済アジェンダを公表した。

閣議に先立ち、エマニュエル・マクロン大統領は、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相と会談した。5月の首脳会談以降、欧州の競争力強化と生産性向上のために仏独の協力体制を再構築してきたことに触れ、仏独の合意は欧州にとって必要条件であると述べた。仏独経済アジェンダの主な内容は次のとおり。

エネルギー分野では、国境を越えたエネルギー市場統合に向け、ドイツのアンプリオン、フランスのRTEなどの送電事業者が検討中の新たな電力相互接続の可能性に関する協議を支援する。また、欧州南西部の水素回廊の早期実現に向け、進行中の2つのプロジェクト、H2Med(注1)とHY-FEN(注2)への長期的なコミットメントと支援を再確認した。さらに、欧州の気候目標達成に貢献する全てのネットゼロ、低炭素エネルギー技術を公平に扱い、行政・規制上の負担軽減策について共通のアプローチを策定するための協力メカニズムを構築する。

貿易と安全保障分野では、欧州企業が直面する地政学的緊張と貿易上の課題の増大を踏まえ、公平な競争条件や欧州の経済安全保障戦略の効果的な実施に焦点を当てた仏独間の協議を年2回実施することを決めた。欧州が野心的かつ公正な貿易協定を交渉し締結することが、欧州企業の輸出促進、および欧州経済へのリスク軽減に不可欠であるとの認識のもと、より実践的な欧州の2国間貿易計画を支援していく。また、補助金による過剰生産能力などの非市場的政策によって高まる保守主義の問題については、EUの持つあらゆる措置と協調しながら、個別事例と全体戦略の両面で検討を深める。

個別産業については、欧州の産業競争力強化を目指し、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の改定や、エネルギー集約型産業の支援として当該産業向けの電力料金を設定することの重要性を確認。先端技術、デジタル主権分野では、人工知能(AI)分野におけるフランスとドイツの研究・投資エコシステムと既存の人材誘致プログラムを強化し、連携を深めるとともに欧州のデジタル主権を確立するため、11月18日に欧州デジタル主権サミットを開催することを発表した。

(注1)イベリア半島からフランスを経由しドイツまでグリーン水素供給網を構築するプロジェクト。フランス、スペイン、ポルトガルによるイニシアティブをドイツが支援している(2023年7月20日付地域分析レポート参照)。

(注2)フランス南部からドイツ国境付近まで水素供給のインフラを構築するプロジェクト。

(坂本紀代美)

(フランス、ドイツ、スペイン、ポルトガル)

ビジネス短信 61d8558111b6b72e