ラオス商工省、ソーラールーフトップなど経済特区内の自家発電を推進へ

(ラオス)

ビエンチャン発

2025年11月21日

第9期第10回ラオス国民議会通常会議が11月10日から21日まで開催された。11月13日には、マライトーン・コンマシット商工相が同国のエネルギー政策について答弁した。同相は、ラオス国内には現在109カ所の発電所が整備され、総発電容量は1万2,235メガワット(MW)に達しており、電化世帯率は96%以上に達していると説明した。これは、1975年の建国当時、発電所がわずか4カ所、総容量33MW、電化世帯率3%からの大きな改善を示している。

また、同相は再生可能エネルギーの推進に向け、屋根置型太陽光発電(ソーラールーフトップ)やバイオマス発電の導入を検討し、農業・工業・住宅分野での自家消費型発電を奨励する方針を示した。加えて、工業団地や経済特区における自家発電設備の整備も進める計画で、ラオス電力公社(EDL)からの送電は、不足時の補助電源として利用する案も提示した。なお、ラオス政府は既に、2025年5月6日付の指示(第2188号)により、EDLが住宅用ソーラールーフトップからの電力を1キロワット時(kWh)あたり922キープ(約6.5円、1キープ=約0.007円)で買い取る制度を承認している。

また、電力価格については、2025年初頭に料金を引き上げた経緯を再度説明し(2025年3月3日記事参照)、その後の国民の声を受けて、9月から12月分の引き上げ率を一部緩和したと報告した。マライトーン商工相は、近隣諸国と比較しても、ラオスの電力価格は最も安価な水準であると理解を求めた。一方、サイソムポーン・ポムビハーン国民議会議長は、2029年までの段階的な電力価格引き上げが消費者に影響を与え、社会的な不満が生じていると指摘し、価格体系の再検討が必要だと述べた。

なお、2025年10月に発表されたASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)のレポートによると、EDLはオンレンディング債務34億ドルと政府保証付き債務18億ドル(注1)を抱えており、国内の独立発電事業者(IPP)や高圧送電を担うラオス国家送電網(EDL-T、注2)への送電費の大部分を外貨建てで支払っている。一方、電力料金の徴収は現地通貨キープで行われていたため、2022年以降のキープ安の進行で大幅に負担が増加したと指摘した。本レポートでは、2022年初頭の電気料金改定は改革の重要な一歩で、EDLは中期的に収益性を回復できる可能性があると評価した。

(注1)オンレンディング債務とは、ラオス政府が外国から借り入れた資金をEDLに再貸し付けしたもの。EDLが返済できない場合はその責任は政府に移る。政府保証付き債務とは、EDLが直接借り入れた資金のうち、政府が保証しているもの。

(注2)EDL-Tは230キロボルト(kV)以上の高圧送電線の建設、運営、保守と近隣諸国への接続を担う送電会社(2025年3月5日記事参照)。

(山田健一郎)

(ラオス)

ビジネス短信 ff69a62494269f15