10月の米ISM製造業景況感指数、コスト転嫁は進展も、企業からは通商関連摩擦を懸念する声
(米国)
ニューヨーク発
2025年11月04日
米国サプライマネジメント協会(ISM)は11月3日、10月の製造業景況感指数
を発表した。企業からは依然として通商関連の摩擦に関する懸念や、影響に関する声が多く聞かれるものの、これまでに実施された関税引き上げに関するコスト転嫁は相当程度進展しつつあることを示唆する内容となっている。
製造業景況感指数は48.7と、前月から0.4ポイント低下し、ブルームバーグの市場予想(49.4)を大きく下回った。項目別では、指数の構成要素のうち、生産(48.2)、受注(49.4)、雇用(46.0)、在庫(45.8)の4項目で基準値の50を下回った。他方、供給スピード(54.2)については3カ月連続で基準値を上回り、供給スピードが低下(注1)していることを示している。指数の構成要素以外の指標では、仕入れ価格(58.0)は引き続き基準値を大きく上回っているものの、関税引き上げ開始後のサイクルの最高値だった4月時点(69.8)と比較すると、11.8ポイント低下しており、BtoBレベルでの価格転嫁が相当程度進展したことを示している。
業種別では、6業種が拡大、12業種が縮小と回答した(注2)。
企業のコメントでは、「米国の貿易政策や、レアアースや半導体に対する中国の輸出規制といった報復措置、海上輸送業者への規制は、サプライチェーンに再び大きな負担をかけている。商用車業界は現在、11月1日開始の商用車を対象とした関税導入に備えている」(輸送機器)、「関税を巡る貿易戦争は農産物輸出市場に悪影響を及ぼし、需要と価格を押し下げている。これは農家の収入と、農家が新しい機器に投資する可能性に悪影響を及ぼしている」(機械)など、米中対立に伴う影響を懸念する声が多数聞かれた。もっとも、10月30日の米中首脳会談での一定の合意(2025年10月31日記事参照)が着実に実行されるならば、今後はこうした懸念は少し和らぐ可能性もある。このほか、サプライチェーンの米国内への移管を試みたものの、うまくいっていないとのコメントも複数見られた。
(注1)基準値50を上回ると供給スピードの遅延、下回ると改善を示す。供給スピードの遅延は商品の動きの多さを示すので、指数として景況の良さを表す。
(注2)拡大と回答した業種は、一次金属、食品・飲料・たばこ、輸送機器、プラスチック・ゴム製品、金属加工、非金属鉱物。縮小と回答した業種は、繊維、衣料・皮革、家具、紙製品、印刷、木材製品、石油・石炭製品、電気機器、化学、機械、その他製造業、コンピュータ・電子機器。
(加藤翔一)
(米国)
ビジネス短信 ed3568e18edd16ff




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