電子機器に対する新たな税が導入へ
(ロシア)
調査部欧州課
2025年11月26日
ロシアの下院は11月20日、電子機器に対する「技術税」という新たな税を導入する法案を可決した。2026年9月1日からの施行を予定する。技術税は、電子製品・部品の輸入業者または国内製造業者が納める。アンドレイ・スビンツォフ下院議員は技術税の導入の主な理由として、ロシアの高金利の影響で中国企業との厳しい競争にさらされている国内メーカーを支援するためと指摘している(「ガゼータ・ルー」11月10日)。国内電子産業の支援や生産の現地化、他国のダンピングに対抗することなどを目的とした、本制度による市場や消費者への影響に注目が集まっている。
技術税の導入は2段階で進められる。2026年9月からの第1段階では、スマートフォンやノートパソコンなどの完成品が課税対象となる。第2段階では、課税対象が電子部品やモジュールへ拡大されるが、導入時期は未定(「RBK」11月10日)。課税額は商品群ごとに固定されるが、1台あたり5,000ルーブルを超えない。正確な税額は品目ごとに今後、政府が決定する。国内メーカーのシェアが低い製品を課税対象とすることが想定されている(「ベドモスチ」11月10日)。
ロシア財務省は、技術税による歳入は2026年から2028年にかけて約2,180億ルーブル(約4,360億円、1ルーブル=約2円)に達すると予測している(「ベドモスチ」11月15日)。
技術税の導入により、電子機器の小売価格の上昇は避けられないとみられている。前述のスビンツォフ下院議員は3~5%の値上がりを予想している(「ガゼータ・ルー」11月10日)。調査会社インフォライン・アナリティカのミハイル・ブルミストロフ社長も、少なくとも課税額分は電子機器の価格が上昇すると指摘する。また、電子商取引企業協会のアルチョム・ソコロフ会長は、新税導入により、合法的に輸入された商品とそうでない商品との価格差が拡大し、闇市場の活発化や正規業者への負担増が懸念されると警告している(「フォーブス・ロシア」11月11日)。
技術税以外にも複数の税制が改正
今回の法案は、技術税の導入に加え、付加価値税の引き上げや簡易課税制度の見直しなど複数の税制改正を含んでいる。付加価値税は2026年1月から、現行の20%から22%へ引き上げられる予定だ(2025年10月1日記事参照)。また、簡易課税制度を適用する前年の売上高基準の引き下げについては、当初想定されていた即時ではなく、段階的に引き下げる。具体的には、現行の年間6,000万ルーブルの基準を、2026年から2,000万ルーブルに、2027年から1,500万ルーブルに、そして2028年以降は1,000万ルーブルに設定される予定だ。
(欧州課)
(ロシア)
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