ロシア財務省、政府に付加価値税22%への引き上げ案提出

(ロシア)

調査部欧州課

2025年10月01日

ロシア財務省は9月24日、財政赤字の拡大などを受けて、付加価値税(VAT)の税率を2026年1月1日から、現行の20%から22%へ引き上げる提案を政府に提出した。同省は、食品や医薬品をはじめとする生活必需品などへの軽減税率は引き続き適用されるとし、「国防と安全保障の資金調達」を主な目的とすると説明している。

VAT引き上げによる追加歳入として、2026年から2028年にかけてそれぞれ、1兆1,870億ルーブル(約2兆1,366億円、1ルーブル=約1.8円)、1兆5,590億ルーブル、1兆6,770億ルーブルが見込まれている(インターファクス通信9月24日)。

中央銀行のエリビラ・ナビウリナ総裁は9月24~27日に南部のソチで開催された第22回国際銀行フォーラムで、政府債務を増加させるよりも、VAT引き上げによる均衡の取れた予算を維持する方がインフレ抑制や金利の安定にとって望ましいと述べた。また、VATの引き上げによって物価が上昇する可能性があるとしながらも、その影響はあくまで短期的なものにとどまると付け加えた(「ベドモスチ」9月25日)。ロシア経済紙「RBK」(9月25日)の取材に応じた専門家らは、消費者物価は2%の上昇にとどまる一方で、企業活動にはより深刻な悪影響が及ぶ可能性があると懸念を表明している。コンサルティング会社「ビジネス・ソリューション・アンド・テクノロジー」のマネジングパートナーのシャリフ・ガレエフ氏は物価上昇が消費者の購買意欲を鈍化させ、それにより消費者需要に敏感な業界、特に一般消費者向けの販売に携わるビジネスに影響を及ぼすだろうと述べた。

中小企業に対する優遇の縮小

VAT引き上げに加えて、財務省は中小企業に対する税制の見直しを盛り込んだ法案を提出した。VAT免除となる簡易課税制度を利用する事業者に対してVAT納税義務が発生する所得基準を現行の年間6,000万ルーブル以下から、同1,000万ルーブル以下に引き下げる。また、中小企業向けに優遇された15%の社会保険料率が見直され、商業、建設、鉱業などの業種の場合、30%の標準料率が適用される。一方で、優先分野と位置付けられる製造業、輸送、電子機器などの産業に対しては、低い保険料率が維持される。

VATは2019年1月1日に18%から20%に引き上げられていた(2018年8月6日記事参照)。

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