第3四半期のGDP成長率は前期比1.2%、政府の消費喚起策が奏功
(韓国)
調査部中国北アジア課
2025年11月04日
韓国銀行(中央銀行)は10月28日、2025年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(速報値)が前期比1.2%だったと発表した。2024年第1四半期(1~3月)以来、1年半ぶりの1%台の成長となった。また、8月28日に発表した経済展望では、第3四半期の成長率予測を当初の0.7%から1.1%に上方修正したが、今回は予測をさらに上回る結果となった。
2025年第3四半期の支出項目別実質GDP成長率(前期比)は次のとおり(添付資料表1参照、前年同期比の支出項目別実質GDP成長率は添付資料表2参照)。
- 民間消費:財(乗用車、通信機器など)・サービス(飲食店・衣料など)の消費が増加し、1.3%増。2022年第3四半期以来の1%台の成長となった。
 - 政府消費:物品購入や健康保険給付金の支出を中心に、1.2%増。
 - 建設投資:建築を中心に、0.1%減。
 - 設備投資:半導体製造装置などの機械類を中心に、2.4%増。
 - 輸出入:輸出は半導体、自動車などが増加し、1.5%増。輸入は半導体製造装置など機械・装置、自動車などを中心に、1.3%増。
 
業種別にみると、農林漁業は栽培業を中心に、前期比4.8%減、製造業は輸送機器、コンピュータ、電子・光学機器などを中心に、1.2%増、電気・ガス・水道事業は電気業を中心に、5.6%増となった。建設業は土木が増えたが、建築が減少し、前期と同水準を維持、サービス業は卸・小売業・宿泊飲食業、金融・保険業などを中心に、1.3%増だった。
韓国銀行のイ・ドンウォン経済統計第2局長は記者会見で、予想を超える成長を達成した背景を説明した。1つ目に、第2四半期(4~6月)に続いて半導体、自動車、石油製品を中心とした輸出が好調だったこと。2つ目に、民間消費が消費心理の改善と政府によるクーポン配布などの消費喚起策に加えて、新製品リリースの効果も重なり、大きく増加したこと。3つ目に、設備投資が半導体製造装置、法人用自動車を中心に増加したほか、今まで不調だった建設投資が港湾、鉄道、発電所などでの着工数増加を受け減少幅が縮小したことだ。
同日に開催されたイベントに出席した具潤哲(ク・ユンチョル)副総理兼企画財政部長官は今期のGDP成長率について、「新政府の初めての総合的な経済成績表」だとし、肯定的に評価した(10月28日付「聯合ニュース」)。
2025年の年間成長率1.0%達成も視野に
韓国銀行は8月時点の経済展望で、2025年の年間成長率を0.9%と予測している(2025年9月3日記事参照)。第3四半期に当初の予測を上回る成長を達成したことで、年間で1%の成長も達成可能ではないかと期待の声が上がる。これに対して、イ局長は「第4四半期(10~12月)に0.1~0.3%の成長をすれば、年間成長率1.0%が達成できる」とした。なお、8月の経済展望では、第4四半期は0.2%の成長を見込んでいる。
10月29日には、韓米関税交渉の争点となっていた投資分野について、韓米首脳会談で妥結した。今後、対米自動車輸出に影響を与えていた25%の関税率は7月に合意した15%まで引き下がるとみられる。経済成長の押し下げ要因とされていた米国関税に見通しが立ったことで、韓国経済に肯定的な影響を及ぼすことが予想される。
(向野文乃)
(韓国)
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