欧州委、EUの2025年GDP成長率予測を1.4%に上方修正、見込まれる継続的な成長
(EU)
ブリュッセル発
2025年11月27日
欧州委員会は11月17日、秋季経済予測を発表した(プレスリリース
)。2025年の実質GDP成長率は、EU27カ国で1.4%、ユーロ圏20カ国で1.3%と予測した。前回の2025年春季経済予測(2025年5月28日記事参照)からは、それぞれ0.3ポイント、0.4ポイント上方修正した(添付資料表1、2参照)。2026年の成長率予測は、EUは1.4%、ユーロ圏は1.2%とした。
EU経済は2025年第1~3四半期(1~9月)、米国による関税引き上げを見越した輸出急増、予想以上に好調だった設備投資などを背景に、春の予測を上回る成長となった。堅調な労働市場、インフレ率の低下、良好な資金調達環境、さらにEU資金による政策支援が、複数の加盟国における財政政策引き締めの影響を緩和し、成長は継続する見通しとした。
2025年のEU加盟国別のGDP成長率は、アイルランド(10.7%)やマルタ(4.0%)を含む17カ国で1.0%以上の成長見込みで、マイナス成長の国はない。アイルランドは、対米輸出の主要品目である医薬品が、アイルランド企業による米国との個別交渉により現時点で実質的な関税措置の対象外となっており、特に上半期に成長を牽引した。ユーロ圏主要国では、スペイン(2.9%)、フランス(0.7%)、イタリア(0.4%)、ドイツ(0.2%)とばらつきがみられた。
2025年のインフレ率の見通しは、EUは2.5%とやや高い水準で推移し、2027年に2.2%まで低下する。ユーロ圏では2025年に2.1%まで低下し、その後2年間は2.0%前後で推移する見通し。
EUの失業率は、2025年と2026年の5.9%から2027年はさらに低下し5.8%と予測した(添付資料表3参照)。EUの労働市場は依然として逼迫しており、域外からの移民が需要を補う。同時に生産性の改善と賃金の抑制により、今後2年間で単位労働コストは低下すると予測した。
今後の下振れリスクとしては、貿易政策の不確実性による影響、現行の関税や非関税障壁、それに伴うサプライチェーンの混乱が、EUの輸出と生産効率に予測より大きな影響を与えうるとした。また、ロシアによるウクライナ侵攻などの地政学的な緊張や、ユーロ高による競争力の低下、気候変動に関連した災害対策費の上昇を挙げた。
一方、EUの改革と競争力強化政策、域内生産に重点を置いた防衛費支出の拡大、新たな貿易協定は、経済活動を押し上げる可能性があるとした。
(大中登紀子)
(EU)
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