欧州委、EUの2025年GDP成長率予測を1.1%、不確実性の拡大で下方修正

(EU、ユーロ圏)

ブリュッセル発

2025年05月28日

欧州委員会は5月19日、春季経済予測を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2025年の実質GDP成長率は、EU27カ国で1.1%、ユーロ圏20カ国では0.9%と予測している。前回の2024年秋季経済予測(2024年11月26日記事参照)からは、EUとユーロ圏ともに0.4ポイント下方修正した(添付資料表1、2参照)。米国による一連の関税引き上げの影響や、貿易政策の不確実性によると説明した。2026年の成長率予測は、EUは1.5%、ユーロ圏は1.4%とした(注)。

EU経済は、2024年第4四半期(10~12月)は政府消費支出や個人消費、サービス輸出の拡大により予測を上回り(0.4ポイント増)、2024年通年の成長率は1.0%となった。2025年第1四半期(1~3月)も経済成長は継続したものの、高い資金調達コストと経済政策の不確実性により、投資は予測を下回った。

EUの輸出は、世界的な需要の縮小や競争力の低下、不確実性の高まりを受け、前回から下方修正し、2025年は0.7%増(前回2.2%)、2026年は2.1%増(同3.0%)と予測し、輸入も、輸出の縮小と内需の減退により、下方修正した。

個人消費は、雇用と賃金の継続的な拡大や、インフレの減速、純利息支払いの減少などによる可処分所得の拡大を背景に、2025年は1.5%増、2026年は1.6%増と予測している。雇用は、2024年の緩やかな成長を受けて雇用は拡大しており、EUの2025年の失業率は5.9%、2026年は5.7%と、歴史的な低水準になる見通しだ(添付資料表1、3参照)。ユーロ圏のインフレ率は、2024年の2.4%から2025年は2.1%、2026年は1.7%に下がると予測した。

2025年のEU加盟国別のGDP成長率は、オーストリア(マイナス0.3%)を除き、プラス成長予測した。ユーロ圏主要国では、スペイン(2.6%)、イタリア(0.7%)、フランス(0.6%)は成長が予測される中、ドイツは0.0%の見通しだ。

今後の下振れリスクとしては、EUと米国の貿易摩擦の激化、また、米国と他の主要国間の貿易摩擦の激化も、EU経済に波及する可能性を指摘。上振れ要因としては、米国の中国への追加関税の引き下げ(2025年5月13日記事参照)や、EUと米国の貿易摩擦の緩和、EUと他国との貿易協定の締結は、EUの成長に貢献するとした。外圧により、単一市場の深化や貯蓄・投資同盟(2025年3月28日記事参照)が促される可能性も指摘した。ドイツのインフラ投資と防衛費の拡大(2025年3月24日記事参照)は経済活動を支え、ドイツとEUの成長を押し上げる可能性があるとした。

(注)この予測は、米国による関税措置が一律10%のベースライン関税にとどまる仮定に基づき(鉄鋼・アルミニウム製品、自動車の25%関税、医薬品、半導体など一部の対象外製品除く、2025年4月11日記事参照)、国・地域ごとに設定された追加関税とEUによる対抗措置は含まれていない。

(大中登紀子)

(EU、ユーロ圏)

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