チッタゴン港、ターミナルの開発・運営を外国企業へ委託
(バングラデシュ、デンマーク、スイス、アラブ首長国連邦)
ダッカ発
2025年11月26日
バングラデシュのチッタゴン港湾局は11月17日、新たに開発するラルディア・コンテナターミナルおよび既存のパンガオン内陸コンテナターミナルについて、外国企業と委託契約を交わした。狙いは、バングラデシュの港湾に世界水準の技術と効率をもたらすことにある。
デンマークに本社を構える海運コングロマリットのA.P.モラー・マースクの子会社APMターミナルズは、ラルディア・コンテナターミナルの30年間の開発・運営権を獲得した。同社は本ターミナルの設計、資金調達、建設、運営を担い、パフォーマンス次第で最長15年間の契約延長が可能となる。
調印式に出席したチッタゴン港湾局のSMモニルザマン局長は、「チッタゴン港の貨物取扱量は2030年まで年率11%増加する見込みだ。われわれは取り扱い能力と効率性の両方を至急向上させなければならない」と述べ、港湾の混雑緩和に期待を寄せた。運営開始後、年間80万TEU(20フィートコンテナ換算)以上の取り扱いが見込まれている。APMターミナルズは契約に基づき、3年以内にターミナルの建設を完了し、2030年までに運営を開始する予定だ。ターミナルの施設は24時間365日稼働し、大型船舶の受け入れや物流コストの削減、貨物配送の迅速化を目指す。
また、スイスの海運大手MSCグループ傘下のメドログは、パンガオン内陸コンテナターミナルの拡張・運営について、チッタゴン港湾局と22年間の契約を交わした。調印式に出席したサカワット・フセイン海運顧問(閣僚に相当)は本ターミナルについて、2013年の開設以来、価格優位性が不明確かつ通関手続きが遅かったため、毎年損失を計上していたと明らかにした。メドログは今後、年間16万TEUの取り扱い能力を備えるためターミナルの施設を拡張し、艀(はしけ)を活用してパンガオンとほかの河川港および海港との接続を図る。また施設の拡張に合わせ、移動式港湾クレーン2基、冷凍コンテナへの接続設備、24時間の電力供給、空コンテナの保管場、修理ヤード、最大1万平方メートルの荷役作業スペースを備えた拡張型コンテナ貨物ステーション(CFS)を設け、隣接地に綿花倉庫や乾式貯蔵施設を備えた物流拠点が開発されるという。
チッタゴン港湾局はさらに、同港最大のニュー・ムアリング・コンテナ・ターミナルの賃貸借契約に向けた準備も進めている。同局は2025年12月までに、ドバイに本拠を置く港湾運営会社ドバイ・ポーツ・ワールド(DPワールド)と契約を交わしたい構えだ。
他方、保守的なイスラム教団体のヘファジャテ・イスラームが11月17日、「外国企業に重要な港湾を管理させることは国家の利益と安全を脅かす」と抗議声明を発表した。18日には、チッタゴン市内で外国企業との契約締結に抗議する港湾労働者が道路を封鎖するなどの混乱が起きた。バングラデシュ政府は10月15日にチッタゴン港のサービス料金の引き上げを施行したが、外資系のターミナル運営会社を誘致したい思惑があるとみられていた(2025年10月15日記事参照)。
(片岡一生)
(バングラデシュ、デンマーク、スイス、アラブ首長国連邦)
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