英国政府、北ウェールズで英国初の小型モジュール炉建設へ

(英国、米国)

ロンドン発

2025年11月19日

英国政府は11月13日、北ウェールズ・アングルシー島のウィルファ(Wylfa)旧原子力発電所を英国初の小型モジュール炉(SMR)の建設地として選定したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ウィルファが選ばれた背景には、1960年代から原子力発電の実績があり、高度な技能を有する地元人材が多いことや、地域コミュニティが建設に協力的であることが挙げられる。政府機関のグレート・ブリティッシュ・エナジー・ニュークリア(GBE-N、注1)が2026年に建設を開始し、ロールスロイスの子会社ロールスロイスSMR(注2)が設計を担う。初期計画ではSMR3基が建設される予定だが、GBE-NはSMRを最大8基まで設置可能と見込んでいる。2030年代半ばには、ウィルファのSMRから電力網への供給が開始される見通しだ。

また、政府はGBE-Nに対し、イングランド南西部サマセット州のヒンクリーポイントCやイングランド東部サフォーク州のサイズウェルCに加え、さらなる大規模原子炉プロジェクトの選択肢を追求するため、候補地の特定を指示した。GBE-Nは次期の歳出計画に向けて、2026年秋までに候補地に関する報告書を提出する予定としている。

英国ではサイズウェルC原子力発電所の建設承認や、2025年度歳出見直し(Spending Review)で核融合への25億ポンド(5,100億円、1ポンド=約204円)の投資が決定されるなど(2025年6月12日記事参照)、クリーンエネルギー確保およびエネルギー安全保障の強化に向け、核融合・原子力産業への取り組みが加速している。民間投資に関しては、英国政府は米国と規制当局間で原子力協定を締結し(詳細は英国政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、両国の新規原子力発電所建設の迅速化、SMRの技術開発を行う米国のX-エナジー(X-Energy)やエネルギー大手セントリカ(Centrica)によるイングランド北東部ハートルプール市での先進モジュール炉(AMR)最大12基の建設計画を後押しするなど、米国企業による投資も進展している。

また、原子力発電所を支える人材開発も強化される。英国原子力公社(UKAEA)と製造技術センター(MTC)トレーニングは連携し、核融合・原子力分野での就業を目指す2つの見習いプログラム「原子力保健物理モニター」および「原子力作業員」コースを新設した。原子力関連の人材不足に対応するためで、2025年度募集コースはすでに定員に達している。本コースには企業向けの資金支援も用意されており、2026年度向けには企業から高い関心が寄せられている。

(注1)2023年7月に設立した原子力産業を支援する政府機関。

(注2)ロールスロイスSMRは2025年6月、GBE-Nが英国初のSMR建設のパートナーとして選定した優先交渉者。現在、国内で初めて建設される原子炉設計に対して行う包括的設計認証審査(Generic Design Assessment、GDA)の、一般的な安全、保安、環境保護に関する事例を抽出して詳細に評価する段階(ステップ3)にある。最終投資決定は2029年に予定されている。

(バリオ純枝)

(英国、米国)

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