英政府、大型原子力発電所投資とSMR建設の優先交渉者を決定
(英国)
調査部欧州課
2025年06月12日
英国政府は6月10日、翌11日に発表予定としていた歳出見直し(Spending Review)の一環として、サイズウェルC原子力発電所の建設に142億ポンド(約2兆7,690億円、1ポンド=約195円)を投資すると発表した(サイズウェルC原子力発電所の詳細は2024年9月12日記事参照)。これによって建設の遅延や不確実性が収束し、建設ピーク時に約1万人の雇用を創出し、サプライチェーン全体で建設、溶接などの分野で数千人の雇用を支えるとしている。
英国政府は同日、小型モジュール炉(SMR)建設の英国初の優先交渉者に、ロールスロイスの子会社ロールスロイスSMRを選定すると発表した。2023年7月から原子力産業を支援する政府組織グレート・ブリティッシュ・ニュークリア(GBN)主導でコンペティションが行われており、GE日立ニュークリア・エナジー、ロールスロイスSMRなど4社にまで候補企業が絞り込まれていた(2024年10月10日記事参照)。政府によると、GBNから社名変更したグレート・ブリティッシュ・エナジー・ニュークリア(GBE-N:注)とロールスロイスSMRは今後、2025年後半に契約を締結の上、開発会社を設立する。SMRの電力系統への接続は2030年代半ばまでを見込むとしている。また、産業戦略の一環として、歳出見直し期間である2029年度(2029年4月はじまり)までに、SMR全体に25億ポンド以上を出資するとしている。
英国政府はネットゼロの実現に向け、再生可能エネルギーと原子力発電を推進しているが、既存の大型原子力発電所の多くは2030年までに廃止の予定だ。そのため、新たな原子力発電所の確保に向け、規制プロセスの合理化や技術革新の促進に取り組むこととしていた。政府は今回の発表を踏まえ、2030年代にSMR、建設中のヒンクリーポイントC原子力発電所、建設計画中のサイズウェルC原子力発電所が稼働すれば、過去半世紀で最大の原子力発電所由来の供給力が得られるとしている。
(注)英国政府はこの発表に合わせ、GBNをGBE-Nに改名することを発表した。
(齊藤圭)
(英国)
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