新たな食料自給率の目標設定、2035年達成目指す
(シンガポール)
シンガポール発
2025年11月07日
シンガポールのグレース・フー環境持続相は11月4日、食料自給率を2030年までに栄養ベースで30%までに引き上げる目標の代わりに、2035年までに野菜などの食物繊維について国内消費量の20%、卵や海産品などのタンパク質について国内消費量の30%を目指す新たな食料自給率の目標を設定した。同大臣がアジアパシフィック・アグリフード・イノベーション・サミット2025の開幕演説で明らかにした。
同国は現在、食品の90%以上を輸入に依存している。政府は2019年3月に、2030年までに栄養ベースの食料自給率を30%まで引き上げる目標を発表していた(2020年9月17日付地域・分析レポート参照)。しかし、その後、食料自給率は伸び悩んでいる(2023年5月25日記事参照)。フー環境持続相は「新型コロナ(ウイルス)禍に伴う国境封鎖による食品供給の遮断や、一部の国々の輸出禁止措置のほか、動物の感染病による打撃を受けた」と述べた。また、農地が限られ、経営コストの高さも課題として挙げた。シンガポール食品庁(SFA)の最新統計(6月5日発表)によると、2024年の自給率は鶏卵が約34%、野菜が3%、海産品が6%にとどまる。
フ―環境持続相は新たな目標について、土地が限られたシンガポールでは全ての食品を生産するのは困難なため、目標の対象を食物繊維とタンパク質に絞ったと説明した。また、国内の農家や養殖場への支援として、(1)複数の農家が利用できる多目的農業協同施設の検討、(2)生産向上に資する技術革新のための研究資金の支援、(3)優良な種卵や稚魚を供給するプログラムの拡充、(4)地元農産物や水産品の販売促進への支援強化を挙げた。
同大臣は食品安全保障の戦略として、国内の食物繊維やタンパク質の生産能力に加え、輸入元の多角化や、備蓄対象品目の拡大を進める考えを示した。さらに、サプライチェーンの分断リスクを回避するため、特定の国々との協定締結を進める方針を示した。
前出のサミットは、アグリテックやフードテックに関する「シンガポール国際アグリフード・ウイーク(SIAW)2025
」の一環として毎年開催されているイベントの1つだ。SIAW期間中(11月3~6日)にはこのほか、国際展示会「アグリフード・テック・エキスポ・アジア
」などのイベントや国際会議が同時開催された。
(本田智津絵)
(シンガポール)
ビジネス短信 b278b04e27a49b9e




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