米カリフォルニア州、量子技術強化へ新イニシアチブ発足

(米国)

サンフランシスコ発

2025年11月18日

米国カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)は11月7日、次世代量子技術で同州の競争力を強化する産官学連携の新しいイニシアチブ「クォンタム・カリフォルニア」を発足外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この取り組みは、量子研究の産業応用を促す州法(AB940外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に基づき、州ビジネス・経済開発局(GO-Biz)が戦略的枠組みを策定し、400万ドルの州予算を投じて人材育成や研究開発を支援する。

ニューサム知事は「カリフォルニアは常に未来が始まる場所だ」と述べ、量子コンピューティング、センシング(注1)、通信分野での技術的優位を確立する姿勢を強調した。同州は、国立科学財団(NSF)と連邦エネルギー省(DOE)の量子研究センターの両方を有する全米唯一の州で、主な研究拠点として、カリフォルニア大学バークレー校、同ロサンゼルス校(UCLA)、南カリフォルニア大学(USC)、スタンフォード大学、グーグル・クォンタム・AI(人工知能)キャンパス(カリフォルニア大学サンタバーバラ校内)、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)量子コンピューティング・センター(カリフォルニア工科大学内)などが挙げられる。

同州はさらに、レアアースやホウ素など量子ハードウエアに不可欠な重要鉱物の生産地でもあり、同州によると、30以上の採掘・加工プロジェクトが展開されている。また、年間輸出額102億ドルで全米首位となる半導体・マイクロエレクトロニクス産業を有し、フォトニクス(光工学)、ナノファブリケーション(注2)、ウエハーレベル集積フォトニクス(注3)などの研究開発、試験環境が整う点も強みとされる。企業はこれらの設備を活用し、州内でプロトタイプから量産まで一貫して高度デバイス開発が可能だという。

GO-Bizは量子ビジネスの州内進出を検討する企業に対し、助成金、税額控除、資金調達支援のインセンティブプログラムを案内外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。米国では、連邦政府が国家量子イニシアチブ(NQI)やCHIPSおよび科学法の枠組みの下、量子・AI・半導体を統合した研究投資を推進し、イリノイ州が「量子バレー」形成を目指すなど、連邦・州の双方で量子分野の政策強化と実装が加速している(2025年11月7日記事参照)。カリフォルニア州でも、これまで企業や大学が主導してきた量子コンピュータ開発・運用に加え、州としての政策支援が本格化し、量子技術エコシステムの構築に向けた後押しが始まった。

(注1)量子力学の特性を用いて、物理量のごく微少な変化を計測する方法で、従来型センサーを大きく上回る高い感度を実現できる。

(注2)量子コンピュータの基本単位の量子ビットの製造に必要なナノメートルスケールでの微細な構造を加工する技術。

(注3)ウエハー上に、光を使って情報を処理、伝送する複数の光学部品を集約する技術。

(松井美樹)

(米国)

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