EU、CBAM規則の簡素化案で政治合意、目標は維持しつつ負担軽減
(EU)
ブリュッセル発
2025年06月25日
EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は6月18日、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)規則の簡素化・実効性強化案に関し、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース)。欧州議会は5月22日の本会議で欧州委員会の改正法案を承認し、EU理事会は5月27日に欧州議会との交渉に向けた立場を採択して、両機関による交渉は短期間で合意に至った。規則案は今後、両機関による正式な承認を経て施行される見込みだ。
政治合意の内容は、欧州委の提案(2025年3月4日記事参照)におおむね沿った内容で合意した。まず、CBAM報告の適用除外基準を現行のEU関税法典(UCC)の少額貨物の定義の150ユーロ以下から、輸入者当たりCBAM対象製品の年間累積の閾値(いきち)を50トンとする重量ベースとした。2023年10月に開始されたCBAM移行期間中の報告の約90%を占めた中小企業や臨時輸入者は適用対象外となり、温室効果ガス(GHG)排出量の99%を占める残り10%の事業者が対象となる閾値の設定で気候変動目標は維持されるとした。
このほか、報告にかかる認可手続きやデータ収集、体化排出量の算出方法、排出量のモニタリング方法、第三国で支払われた炭素価格の控除の詳細なども、簡素化の対象に含まれた。また、罰則や間接的通関代理人に関しても合意した。
欧州委員会は、同簡素化はクリーン産業ディール(2025年3月4日記事参照)を具体化したもので、域内の競争力強化、経済・投資の促進につながるとした。欧州委のウォプケ・フックストラ委員(気候・ネットゼロ・クリーン成長、税制担当)は、記録的な速さで合意を達成し、CBAMを強化する重要なステップを踏むことができたとコメントした。今後、2026年1月からの本格適用を前に、2025年後半にかけ、現行ではCBAM対象に含まれていないEU ETS対象セクターの品目への適用範囲の拡大や、川下製品への適用拡大、迂回防止策などを定める法案が提出される予定だ。
(薮中愛子)
(EU)
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