ドイツ史上最大級の民間投資イニシアチブ「Made for Germany」発表、6,310億ユーロを国内に投資

(ドイツ)

ベルリン発

2025年07月31日

ドイツで7月21日、国内外の主要企業がドイツの投資環境の改善に貢献することを目的に投資拡大を推進するイニシアチブ「メード・フォー・ジャーマニー(Made for Germany)」の設立が発表された。ドイツ銀行、シーメンス、フォルクスワーゲン(VW)、アリアンツといったドイツ企業のほか、エヌビディア、ブラックロック、ブラックストーンといった米国企業も含む61社が本イニシアチブに参加。2028年までに総額6,310億ユーロをドイツ国内に投資する計画で、うち数千億ユーロ規模が新規投資に割り当てられる。

本イニシアチブは、主要企業と投資家が業界を越えて連携し、ドイツの未来に備えた経済を築くことを目的に設立。ドイツ国内の新規拠点への投資のほか、研究開発やインフラの近代化にも投資を行う。2025年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)では「欧州は投資不可能な地域」との見方が広がっていたが、これに対し、ドイツ銀行のクリスティアン・ゼービング最高経営責任者(CEO)とシーメンスのローランド・ブッシュCEOらが中心となり、企業連携による投資構想を提案。地政学的・経済的課題の背景の下で企業と政府間の建設的な交流を強化する新たな時代を築き、ドイツの投資環境を持続的に向上させることを目指す。

企業の代表者たちは、首相府でフリードリッヒ・メルツ首相らと面談した(首相府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、ドイツ語)。面談後の記者会見で、メルツ首相は「過去最大級の投資イニシアチブの1つに対面している」と述べ、さらにドイツが要する投資は「国家だけでは成し得ない。民間資本の力が必要」と強調し、官民連携による経済再建の必要性を訴えた。

連邦政府による民間投資促進のための減価償却の優遇策や減税措置を軸とした支援策が7月11日に可決(2025年7月22日記事参照)されたところで、企業側も早速これに呼応するかたちとなった。

なお、本発表に対してドイツ国内では、慎重な評価も見られる。ifo経済研究所のクレメンス・フエスト所長は報道のインタビューに対し、経済にとって良い刺激になると評価する一方で、「政府債務で賄われる一過性のものなのか、それとも本当に持続的な投資につながるのか」という疑問も残る、と語った(7月21日付、ベルリン・ブランデンブルク公共放送局「rbb24 INFORADIO」)。現地日刊紙「フランクフルター・アレゲマイネ」(7月27日)は、投資額6,310億ユーロの具体的な案件と金額の内訳がわからず不透明と指摘。また、経済紙「ハンデルスブラット」(7月22日)は、独自取材で本イニシアチブの主要プロジェクトのリストを入手したが、リストには発表済みまたは既に建設中の投資も含まれており、企業のPR色が強いものもあると指摘した。

(中山裕貴)

(ドイツ)

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