タンザニアで大統領選、現職が圧勝

(タンザニア)

ナイロビ発

2025年11月04日

タンザニア国家選挙委員会は10月29日に行われた大統領選挙の結果を11月1日に発表した。現職のサミア・スルフ・ハッサン大統領が97.66%の票を獲得し、続投が決まった。副大統領には与党・革命党(CCM)のエマニュエル・ジョン・ンチンビ幹事長が就任する。選挙に先立って公表されたCCMのマニフェストでは、2030年までに7%のGDP成長と10%の農業分野の成長を達成し、800万の新規雇用を創出することなどを公約として掲げている。

大統領選にはCCM含む17党が候補者を立てたが、主要な野党の民主開発党(CHADEMA)や、変革と透明性のための同盟(ACT:愛国者党)は参加資格が認められなかった(2025年9月25日記事参照)。現地報道によると、選挙当日には選挙の不正や無効を訴える抗議デモがダルエスサラームのほか各地で発生し、治安部隊との衝突が発生した。この状況を受け、政府は夜間外出禁止令を発出したほか、数多くの道路を封鎖し、フェリーや鉄道などもサービスを停止、国内外の航空便も多くのキャンセルが発生し、大幅に制限された。また、選挙当日には電気やインターネットの制限も行われたという。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は10月31日、タンザニアの状況を深く憂慮するとの声明を発表した。国連人権委員会は同日、ダルエスサラームやシニャンガ、モロゴロなどで治安当局がデモ隊に発砲し、少なくとも10人が死亡したと発表している。一方、野党・CHADEMAは700人以上が殺害されたと主張している。アフリカ連合委員会(AUC)のマハムード・アリ・ユスフ委員長は11月1日、サミア大統領の勝利を祝福する声明を発表し、選挙後の抗議活動で人命が失われたことに遺憾の意を表明した。

日本の外務省は同日、ダルエスサラームを中心に国内各地で抗議活動が発生していることから、タンザニアへの不要不急の渡航延期の注意喚起外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発出している。米国務省も3日に「騒乱(unrest)」リスクがあるとし、危険レベルをレベル2から3に引き上げた。

(佐藤丈治)

(タンザニア)

ビジネス短信 5a28a9e5f9da2669