米ミシガン州政府、トランプ関税の影響に関する調査結果を発表、輸出減や価格上昇などを指摘

(米国、中国、カナダ、メキシコ)

シカゴ発

2025年11月10日

米国ミシガン州政府は11月5日、連邦政府による関税措置が州内の経済にどのような影響を与えているかに関する調査結果を発表した。この調査は、同州のグレッチェン・ウィットマー知事(民主党)が7月31日に署名した行政命令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づいており、報告書は関税による影響で価格上昇、調達時の高コストや納期遅延が生じ、最終的に州民に影響が及ぶと結論付けた。中でも、最も影響を受けるとされる層は次のとおり。

〇農家と一般家庭〔ミシガン州農業資源開発局(MDARD)の発表に基づく〕:2025年上半期の農産物輸出は前年同期と比較して激減した(小麦89%減、サクランボ62%減、リンゴ58%減、大豆46%減)。減少の原因として、米国政府の関税措置によって、中国やカナダなどの貿易相手国から報復関税が課されたことを指摘した(注)。また、店頭での香辛料(前年同期比50%増)、缶詰の缶などの食品包装材(12%増)、食品(3.6%増)などの価格上昇を指摘。州経済に年間約1,260億ドルをもたらし、州内で80万人以上の雇用を支える食料・農業関連企業に不確実性をもたらしているとした。

〇住宅建設業者と購入者〔ミシガン州住宅開発局(MSHDA)の発表に基づく〕:住宅建設に必要な資材費が米国全体で最大40億ドル増加し、既に記録的な高値にある住宅価格がさらに上昇、住宅購入コストが1万ドル増加するという。住宅建設資材の7%は外国産で、特に主要資材である軟質木材と石膏(せっこう)ボード用石膏は、カナダとメキシコからの輸入に依存している。また、中国からは建設に使用される鉄鋼・アルミニウムや、多くの家電製品が輸入されている。

〇道路の建設請負業者と労働者〔ミシガン州運輸局(MDOT)の発表に基づく〕:計画中のプロジェクトの先行き不透明感が増している。関税とインフレによる価格上昇を考慮すると、最大2億1,800万ドルの影響が生じるとしている。関税が継続すれば、道路修理の資材コストが最大1億6,800万ドル増加し、州が重要な道路や橋を予算内で期限通りに修理する能力が低下する。また、インフラ設備に使用される多くの部品・部材が関税の対象となり、購入コストの上昇と納期の遅延を招いている。

このほか、州政府は、関税による自動車部品の価格上昇にともない、自動車保険会社が保険料率の引き上げをする可能性や、大手自動車メーカーでの損失や大量解雇の実施につながっていることなどを指摘した。

(注)米国の主要貿易相手国である中国は、11月10日から、米国からの輸入品に対する24%の報復関税を1年間停止すると発表したが(議会専門紙「ザ・ヒル」11月5日)、米国の対中輸出農産物の中でも重要な大豆に関して、13%の関税を引き続き適用するとした(ロイター11月5日)、一方、米国政権は11月1日に、中国が2025年最後の2カ月間に少なくとも1,200万トンの米国産大豆を購入し、さらに2026~2028年の各年に少なくとも2,500万トンの米国産大豆を購入することで合意したと発表した(2025年11月4日記事参照)。

(星野香織)

(米国、中国、カナダ、メキシコ)

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