第3四半期GDP成長率は前期比0.1%、ジャガー・ランドローバーの生産停止が影響
(英国)
ロンドン発
2025年11月25日
英国国家統計局(ONS)が11月13日に発表
した2025年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(第1次速報値)は前期比0.1%となり、前期の0.3%から減速した(添付資料表、図参照)。
需要項目別では、家計最終消費支出が前期比0.2%増となった。衣服・靴、娯楽・文化関連の支出が伸びた。総固定資本形成は、情報通信技術(ICT)機器、その他の機械・装置、住宅、知的財産製品への投資が増加し、全体で1.8%増となった。政府最終消費支出も、教育や社会福祉分野の支出の伸びを背景に、全体で0.3%増となった。
産業別でみると、サービス業が前期比0.2%増とプラス成長を維持。企業向けサービスが0.3%増と全体を牽引した一方、消費者向けサービスは0.1%減となった。とりわけ芸術・娯楽およびレクリエーション、不動産、公共行政・防衛・社会保障分野が増加に寄与した。
一方、製造業は前期比0.8%減と減少に転じた。自動車・トレーラーなどの製造が10.3%減と大きく落ち込み、輸送用機器全体で4.5%減となったことが影響した。英国自動車製造販売者協会(SMMT)
によると、2025年9月の自動車生産台数は前年同期比35.9%減の5万4,319台にとどまった。
ONSのGDP発表では、自動車メーカーが「カテゴリー3(重大なインシデント)」に相当するサイバー攻撃を受け、生産停止が発生したことが製造業の落ち込みに影響したと指摘している。これはジャガー・ランドローバー(JLR)が8月末に受けたサイバー攻撃(2025年9月29日記事参照)を指している。
JLRは11月14日、2025年7~9月期の税引き前純損失が4億8,500万ポンド(約994億円、1ポンド=約205円)と赤字に転落したと発表した。一方で10月8日以降、生産は再開しており、同発表時点で、生産は正常化していると説明した。サイバーインシデントの監視などを行う非営利団体サイバーモニタリングセンターは、同インシデントにより、英国全体で19億ポンドの経済的損失が発生し、5,000以上の国内の企業、団体などが影響を受けたと推計している。こうした状況を受け、英国政府はサイバー攻撃への対策強化法案を発表するなど、対策を急いでいる(2025年11月17日記事参照)。
(森詩織)
(英国)
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