ルーラ大統領、COP28で2030年までのアマゾンなど森林破壊完全収束目標を発表

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年12月14日

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は12月1日、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の首脳級ハイレベル・セグメントで演説を行い、ブラジルの現在までの成果および今後の目標について説明した。アマゾンの森林破壊は2023年1~10月の期間で、2022年比で約50%減少したことを強調し(注1)、2030年までに森林破壊を完全に終わらせる目標を示した。

ルーラ大統領は「グローバル・サウスの多くの国にとって、自国の温室効果ガス排出削減目標(NDC)を自力で達成することや今までより高い目標を設定することは極めて困難だ」と指摘し、先進国からの支援を求めた。また、2009年のCOP15で先進国が発展途上国に対して年間1,000憶ドルを提供する約束をしたことを引き合いに出し、「(年間1,000憶ドルを提供する約束は)いまだに実現されていない。とても受け入れられないことだ」と訴えた(注2)。

森林保護へ基金設立、先進国ファンドなどから2,500億ドル調達

先進国の支援で森林保全を行う1つの試みとして、マリーナ・シルバ環境・気候変動相およびフェルナンド・アダジ財務相は同日に、COP28の会場で「トロピカル・フォレスト・フォーエバー」と呼ばれる国際熱帯雨林保護基金の提案を発表した。同基金は、先進国のソブリン・ウェルス・ファンドなどから資金を低金利で集め(注3)、環境を害することのない金融資産に投資される。その収益の一部はソブリン・ウェルス・ファンドなどに還元され、残存分が熱帯雨林をもつ国々に森林保護活動を実施するため提供される。基金の規模としては2,500億ドルの調達ができると期待されている。運営主体は国際機関になると想定されている。シルバ環境・気候変動相は「われわれが目指しているのは先進国が寄付を与えることで森林を守る仕組みではない。(同基金の提案では)資金に対する報酬がある」と強調した。

12月1日付の環境省公式サイトによると、今後国際社会の意見を参考にしながら2025年にブラジルで開催されるCOP30までに「トロピカル・フォレスト・フォーエバー」の詳細を定めていく予定。

(注1)ブラジル国立宇宙研究院(INPE)が運営するDETERと呼ばれるシステムで測定されたデータによると、2023年1月1日~10月31日のアマゾン森林伐採面積が前年同期比で9,493.9平方キロから4,775.6平方キロ(49.7%減)に減少した。

(注2)2009年にデンマークのコペンハーゲンで開催されたCOP15では、2020年までに先進国全体で発展途上国への支援として1,000億ドルを動員するとの目標が定められた。2015年にフランスのパリで開催されたCOP21では、同目標は2020年から2025年に延期された。

(注3)環境・気候変動省森林局のガロ・バチマニアン局長は会場で資金について説明し、「なぜソブリン・ウェルス・ファンドなのかというと、こうしたファンドのトップ13は既に1兆3,000億ドルを低リスク・低金利の金融資産に投資している。われわれが望んでいるのはソブリン・ウェルス・ファンドがその低リスク資産をやめて、われわれの新しいファンドに投資することだ。それによって、利益とリスクは全く変わらない。しかし熱帯雨林を持つ国々を支えることができるという社会貢献になる」と述べた。ただし、低リスクとしてみなされ、低金利で資金を集めるために信用格付け機関のAAAランクを獲得必要があり、それは今後重要な課題となる、とバチマニアン局長は指摘した。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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