米・オーストラリア首脳、重要鉱物の安定供給に向けた協力強化の枠組みに合意
(米国、オーストラリア、日本、中国)
ニューヨーク発
2025年10月23日
米国のドナルド・トランプ大統領とオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は10月20日、米国の首都ワシントンで会談し、重要鉱物や希土類(レアアース)の安定供給に向けて両国の協力を強化する枠組みに合意した。両国政府はそれぞれ、合意文書を発表した(米国側発表、オーストラリア側発表
)。
合意文書によれば、米豪両国は重要鉱物・レアアースのサプライチェーンを確保するため、既存の備蓄の仕組みなどを活用するほか、重要鉱物・レアアースの採掘・分離・加工・回収のプロジェクトの推進に向けた地質調査、規制緩和、技術開発に取り組む。また、両国は共同プロジェクトを特定した上で、今後6カ月以内に少なくとも10億ドルの資金を提供するための措置を講じ、最終製品の安定供給を目指すとした。
具体的な取り組みとして、ホワイトハウスは同日に発表したファクトシートで、(1)オーストラリア・西オーストラリア州のガリウム精製施設建設プロジェクトに対する米国政府の投資計画を挙げた。また、オーストラリア首相府は翌21日の発表文書
で、(2)西オーストラリア州での双日およびアルコアによるガリウムの回収プロジェクト、および(3)ノーザンテリトリー準州でのアラフラのレアアースの採掘プロジェクトに対する同国政府の融資や投資計画を挙げた。このうち、(2)は日米豪3カ国の共同プロジェクトで、オーストラリア首相府によれば、将来的に世界のガリウム供給量の最大10%を担う見通しだ。
合意文書には、国家安全保障上の観点から、重要鉱物・レアアース関連資産の買収を審査・阻止するための手段や権限の開発や強化に取り組むことも盛り込まれた。戦略的資源が敵対勢力の影響下に置かれることを防ぐ狙いがあるとみられる。
米豪2国間の取り組みに加えて、非市場的政策や不公正貿易慣行から自国の重要鉱物・レアアース市場を保護するため、将来的な国際ルール化も念頭においた最低価格設定メカニズム創設などの基準設計に取り組むことも記した。そのほか、サプライチェーンの確保に向けた第三国との協力に取り組む方針も示した。
合意文書や発表資料では明示的に言及していないものの、中国による重要鉱物やレアアースの輸出管理強化による供給途絶の懸念が米豪の合意の背景にあると考えられる。トランプ大統領は、中国によるレアアースの輸出管理強化への対抗措置として、中国産品への追加関税を100%引き上げる意向を表明するなど、中国の措置に強く反発している(2025年10月14日記事参照)。
なお、今回の発表に米国の関税措置に関する内容はなかった。米国はオーストラリアに対して財貿易黒字を計上しており、同国に対する国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税率は2025年10月現在、10%のベースライン関税のみにとどまる。
(葛西泰介)
(米国、オーストラリア、日本、中国)
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