米国とマレーシア、相互貿易協定を締結、レアアース協力でも合意

(マレーシア、米国)

クアラルンプール発

2025年10月29日

マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は10月26日、第27回ASEAN首脳会合とその関連会議のため同国を訪問した米国のドナルド・トランプ大統領と会談し、相互貿易協定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した(同日付共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。会談を踏まえ、両国の関係を包括的戦略パートナーシップに、11年ぶりに格上げする(マレーシア外務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

協定は、製造業や農業、エネルギー、デジタル分野など幅広い領域で、米国によるマレーシアに対する要請事項でおおむね構成している。米国製品の市場アクセス拡大について、工業品としては化学品、機械・電気機器、乗用車、農産品としては乳製品、鶏肉、豚肉、米、燃料用エタノールなどを具体的に挙げた(協定付属書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。米国から輸出される農産品と水産物は、売上サービス税(SST)の対象からも除外される(付属書1.2条)。

非関税障壁への対応として、米国の安全・排出基準に準拠した乗用車の受け入れや、合金鋼・パイプ製品・鉄鋼製品の輸入ライセンス簡素化、化粧品や医薬品など工業製品のハラール要件簡素化などを明記した。マレーシアによる環境保護や、知的財産権侵害の取り締まり、強制労働の防止、デジタル貿易上の障壁緩和といった、その他の非貿易分野でのコミットメントも確認した。同時に締結した重要鉱物の世界的サプライチェーンの開発と確保の協力強化に向けた覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づき、マレーシアは重要鉱物やレアアースの米国向け輸出に制限を課さないことを約束するとともに、開発企業の操業の継続性確保に向けた長期的かつ安定的なライセンスを付与する見通しだ。

加えて、今後の企業間取引として、マレーシア側による航空機30機以上の調達、1,500億ドル相当の半導体・航空宇宙部品・データセンター機器購入、年間最大500万トン・最大34億ドル相当の液化天然ガス(LNG)購入、2億410万ドル相当の石炭および通信製品・サービス購入、米国での資本投資700億ドルなども盛り込んだ。

マレーシア、関税政策に対する透明性確保

一方、米国はマレーシア製品に対する追加関税率を「19%」に設定したことをあらためて確認した(2025年8月8日記事参照)。米国が1962年通商拡大法第232条に基づく貿易措置を講じる際、今回の協定を考慮することも明記した。ザフルル・アジズ投資貿易産業相は「パーム油やゴム製品、ココア、航空機部品、医薬品など1,711品目が追加関税の対象外だ。対米輸出の12%、金額としては52億ドルに相当する」と明らかにした上で、「国家主権に影響を与えるような2国間合意は行わない」とも強調した。

協定は両国の国内手続きを経て正式に発効する。10月26日午前にクアラルンプール国際空港で自らトランプ大統領を出迎えたアンワル首相は「今回の会談は、1957年以来の両国外国関係を強化するとともに、貿易投資、エネルギー、教育、防衛、デジタル技術、人工知能(AI)の分野で協力深化の新たな道を切り開いた」「(協定は)両国間のサプライチェーン強靭(きょうじん)性を高め、相互利益を促進するための戦略的ステップだ」とコメントした。

(吾郷伊都子)

(マレーシア、米国)

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