米国の対マレーシア相互関税は19%に
(マレーシア、米国)
クアラルンプール発
2025年08月08日
マレーシア投資貿易産業省(MITI)は8月1日、米国がマレーシアに対する相互関税を当初の25%(2025年7月9日記事参照)から19%へと6ポイント引き下げたことを受け、産業改革や市場多角化に引き続き注力するとする声明を発表した。約3カ月にわたる対米関税交渉は、7月31日に正式に妥結した。同日にアンワル・イブラヒム首相は、ドナルド・トランプ米大統領と電話会談を行い、新たな関税率を翌日発表することで合意していた。
MITIは、19%という新たな関税率が東南アジア地域の他国と同水準であるとし、政府による戦略的かつ慎重な交渉が結実したと高く評価した。また、マレーシアは複数の重要課題において一貫した立場を堅持し、社会経済の安定および発展に不可欠な政策を遂行する主権を損なうことなく、合意に至ったと強調した。譲歩内容について、ザフルル・アジズ投資貿易産業相は、米国からの輸入品目の98.4%に対する関税を削減または撤廃し、特定の米農産品には売上税の免除を適用すると述べた。また、人工知能(AI)チップの輸出および通過に関する米国の懸念に対応するため、戦略貿易法第12条(2025年7月16日記事参照)に基づき、管理を強化する方針も明らかにした。さらに、米国向けのレアアース資源および重要鉱物の輸出に対して制限を課さないことにも合意した。交渉の成果と相互の合意事項を盛り込んだ共同声明については、最終調整段階にあり、近日中に発表される見通しだ。
ザフルル氏は「今回の合意は、両国間の強固かつ持続可能な経済関係を反映しており、マレーシアが信頼に足る貿易・投資対象国であることの証左でもある」と述べた。
MITIは、関税率の調整によるGDPへの影響を評価するため、マレーシア中央銀行などの関連機関と連携している。さらに、対応策として、(1)関連省庁・機関と引き続き連携しての輸出産業への影響緩和策の検討・実施、(2)18の自由貿易協定(FTA)活用による輸出市場の多角化・拡大促進、(3)「新産業マスタープラン(NIMP)2030」「グリーン投資戦略」「国家半導体戦略(NSS)」などの主要政策に基づく国内企業の生産性向上・自動化推進・効率化の支援、(4)特に中小企業を対象とした、新たな関税率への適応支援策の検討、などを挙げた。
なお、MITIは、アンワル首相をはじめ、政府機関や経済団体の尽力により、マレーシアとして最善の提案を米国側に提示できたとして、交渉に関与した関係者に謝意を表した。
関税率の調整を受け、国内では好意的な反応が報じられている。製造業連盟(FMM)は8月1日、6ポイントの引き下げは一見控えめだが、米市場におけるマレーシア製品の価格競争力を高めるという点で、業界関係者にとっては大きな意義を持つとコメントした。
(戴可炘)
(マレーシア、米国)
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