主要経済研究所の予測は「不況の終わり」を示す

(オーストリア)

ウィーン発

2025年10月20日

オーストリアの主要経済研究機関であるオーストリア経済研究所(WIFO)と高等研究所(IHS)は、10月7日に2025~2026年の秋季経済予測を発表した(WIFOプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますIHSプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、ドイツ語)。両研究所は前回6月の夏季経済予測(2025年7月4日記事参照)から、2025年のGDP成長率をそれぞれ0.3ポイント上方修正し(WIFO:0.3%、IHS:0.4%)、2年続いた不況の終焉(しゅうえん)を示した。

しかし、不況は終焉の見込みであるものの、大幅な景気回復は見込めず、2026年の成長率は前回予測よりそれぞれ0.1ポイント下方修正され、WIFOは1.1%、IHSは0.9%としている(添付資料表参照)。

今回のより楽観的な見通しの主因は、オーストリア統計局が9月30日に発表した改定データによって、2024年の経済がこれまで考えられていたほど悪くなかったことが明らかになった点にある。特に第4四半期には、サービス業と消費支出の顕著な伸び(それぞれ2.4%増、2.9%増)により、GDP成長率は0.8ポイント拡大した。

2025~2026年の成長の原動力も、消費支出になるとみられている。WIFOとIHSはともに、2024年に実施された大幅な賃上げが、今回の予測期間である2025年、2026年において個人消費を支えると予測している。また2026年には、企業の慎重な投資姿勢は終わり、再び投資が拡大すると見込んでいる。

最近では、繊維メーカーのレンツィングをはじめとする企業による大規模なリストラの報道が続いているものの、失業率は大幅には上昇せず、IHSによると、2024年の7.0%から2025年は7.4%、2026年には7.3%になる見通しだ。

消費者物価上昇率は2025年の3.5%から2026年には2.4%に低下する見込みだが、依然としてユーロ圏平均を上回ると予測されている。

WIFOのガブリエル・フェルバマイヤー所長は、秋季経済予測の発表記者会見で「過去2年の不況は終わった」と述べ、「来年には経済の停滞も終わるが、本格的な回復はまだ見えてこない。2020年代は『失われた10年』になる恐れがある」と警鐘を鳴らした。さらに、2025年の1人当たり実質GDPは2019年より3%以上低く、同研究所の中期予測によれば、2019年の水準に戻るのは2030年以降になると指摘した。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア)

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