主要経済研究所の予測はやや楽観的、経済回復の兆しとの見方も
(オーストリア)
ウィーン発
2025年07月04日
オーストリアの主要経済研究所であるオーストリア経済研究所(WIFO)と高等研究所(IHS)は6月26日、2025~2026年の夏季経済予測を発表した。前回(2025年4月7日記事参照)の予測と異なり、2025年のGDP成長率はマイナスにならない予測となっており(WIFOは0.0%、IHSは0.1%)、2026年には穏やかなプラス成長となる見通しだ(それぞれ1.2%、1.0%)(添付資料表参照)。予測では、2022年下半期から続く第2次世界大戦以降最長の不況は底を打ったとみられているが、下方リスク(地政学リスク、関税措置などの通商政策、インフレなど)も多い。
WIFOのガブリエル・フェルバマイヤー所長は発表の記者会見で、「通常、今回のような経済停滞の予測は決して喜ばしいことではない。しかし、春にはまだマイナス0.3%減の予測だったが、今は少し落ち着いている」と述べた。同所長によると、WIFOの前回よりやや楽観的な予測は次の根拠に基づいている。
- オーストリア統計局によると、2024年第4四半期の値は上方修正されており、春季経済予測の時点よりも回復傾向が見えてきていること。
- 消費者心理が徐々に改善していること。
- WIFOの「企業景況感調査」も明るい傾向を示していること。
- ドイツ政府の景気刺激策により同国の成長期待が大幅に改善していること。
ただし、フェルバマイヤー所長は、2025年はマイナスにはならないが、オーストリアはOECD諸国のうち、最も低い成長率の国の1つであることを指摘している。EUの2025年の経済成長率予測は1.2%で、それに比べてオーストリアは停滞している。
工業生産は、2025年もマイナス(1.1%減)になるが、2026年には国際需要に合わせて輸出が増加することによりプラスに転じる見通しだ。失業率は、労働人口の増加(2025年は0.2%、2026年は0.8%)によって2025年は2024年の7.0%から7.5%に上昇するが、2026年には7.3%に低下する見通し。労働市場の不安は、個人消費にも歯止めをかける。可処分所得は増えているが、不安定な展望のため消費するより貯蓄する傾向となっている(貯蓄率は10.8%でコロナ禍前の2019年より3ポイント高い)。WIFO予測では、2025年には個人消費が0.4%増にとどまるが、2026年には1.3%増に拡大し経済成長を下支える。
(エッカート・デアシュミット)
(オーストリア)
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