欧州会計監査院、「貿易のための援助」目標達成に向け提言

(EU、アフリカ)

ブリュッセル発

2025年10月07日

欧州会計監査院(ECA)は9月17日、EUは2030年までに「貿易のための援助(AfT)」の25%を後発開発途上国(LDC、添付資料表参照)に配分する目標を達成する見込みは低いとする報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

AfTは、2005年のWTO閣僚会議で、開発途上国(特にLDC)が貿易の自由化によって利益を得るのに必要な貿易能力とインフラを構築することを支援する目的で開始された。EUは2007年に貿易支援戦略を採択し、2017年にLDC向けの支援強化を掲げ、同戦略を更新した。しかし、EUと加盟国の2017~2022年のLDC向け支援は172億ユーロにとどまり、その他の開発途上国向けは1,058億ユーロだった。 AfTのうちLDC向けの割合は、2010~2015年は平均18%、その後は減少傾向に転じ、2022年(最新データ)には12%に減少した。

背景には、LDC諸国では保証を含む資金調達へのアクセスや民間資本の動員が難しいことがある。2017~2022年のEUからLDCへのAfTは、無償資金援助が大部分を占めている(無償資金援助78%、融資22%)。

ECAはまた、EUの新たなインフラ投資戦略のグローバル・ゲートウエー(2025年7月3日付地域・分析レポート参照)は、民間セクターの投資動員に強く重点を置いており、LDCにAfT資金の配分が届きにくくなるリスクを指摘している。同戦略が輸送回廊への投資を優先し(2025年9月18日記事参照)、インフラ投資は拡大したものの、LDC諸国にとって重要な農業支援が減少傾向にある点や、資金がより投資効率の高い中所得国に流れる傾向も指摘した。

ECAは欧州委員会に対し、LDC諸国のニーズを踏まえた貿易支援行動計画の策定や、AfTとグローバル・ゲートウエーの連携を推進すべきとした。

欧州委は9月27日、グローバル・ゲートウエーの一環として、アフリカの再生可能エネルギー拡大に向けた5億4,500万ユーロの支援を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。太陽光や風力、水力、地熱発電への投資を通じてサプライチェーンを強化し、2030年までに最大3,800万件の雇用創出を目指す。

(大中登紀子)

(EU、アフリカ)

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