モーリタニア、3億ドル規模の太陽光・風力ハイブリッド発電所の建設契約を締結
(モーリタニア)
パリ発
2025年10月14日
アフリカ開発銀行(AfDB)は10月1日、モーリタニア政府がアラブ首長国連邦(UAE)に拠点を置くIwaグリーン・エナジーと、太陽光独立系発電事業(IPP)者として初となる太陽光と風力のハイブリッド発電所を建設する契約を締結したことを発表した。モーリタニアのシディアフメド・ウルド・ブー経済・財務相とモハメド・ウルドモハメド・マラニン・ウルド・ハレド石油・エネルギー相が9月12日に首都ヌアクショットで、Iwaグリーン・エナジーのムライ・エル・アルビ・ババ最高経営責任者(CEO)と調印していた。同契約は太陽光・風力のハイブリッド発電所の建設と運営、モーリタニア電力公社(SOMELEC)への売電を含むもので、プロジェクト全体で約3億ドル規模となる。AfDBグループが支援する「Desert to Power(砂漠から電力へ)」イニシアチブ(注1)のIPP共通プロトコルに基づいて実施され、発電所の稼働開始は2026年9月を予定している。
石油・エネルギー省はプレスリリースで、同国が初めてバッテリーによるエネルギー貯蔵システムを備えたハイブリッド発電所を保有することになるとした。同省によると、発電所の総設備容量は、太陽光発電が160メガワット(MW)、風力発電が60MWで、370メガワット時(MWh)の蓄電エネルギーを送電網に供給できるようになるという。また、Iwaグリーン・エナジーが3億ドルの資金調達、15年のパートナーシップ期間中の施設の運営と保守など、プロジェクトの全ての財務や技術面を担当すると説明している。
今回の契約は、民間資金を活用して電力生産を拡大し、再生可能エネルギーへの移行を加速させるという同国の政策(2025年9月25日付地域・分析レポート参照)を具体化したもので、ハレド石油・エネルギー相は「民間による資金調達モデルのため、国家の債務を増やすことなく、電力供給を拡大できる」と強調した。
Iwaグリーン・エナジーは、モーリタニア人の実業家ババ氏に率いられ、UAEのドバイに拠点を置くイスティスマール・ウェスト・アフリカ(Iwafrica)が同プロジェクトのために設立したプロジェクト会社だ。Iwafricaは2015年、ギニアで合計100MWの火力発電所3カ所をBOOT方式(注2)で受注し、同社にとって初のIPP契約となった。
(注1)2019年にアフリカ開発銀行グループによって開始。サヘル地域11カ国(モーリタニア、ブルキナファソ、チャド、ジブチ、エリトリア、エチオピア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、スーダン)の太陽光発電の潜在力を活用し、電力生産と電力アクセスの向上を目的とする。モーリタニアのロードマップでは、2030年までに太陽光発電容量を335MW追加するという目標が設定されている。
(注2)Build-Own-Operate and Transferの略で、一括事業請負後譲渡方式といわれる。民間事業者が自ら資金調達の上、施設を建設・所有し、事業期間終了まで運転・維持管理を行い、一定期間終了後に行政に施設の所有権を移転するもの。
(渡辺智子)
(モーリタニア)
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