ハマス、人質解放に条件付き合意、イスラエルは交渉団をエジプトに派遣へ

(イスラエル、パレスチナ、米国、エジプト)

テルアビブ発

2025年10月06日

イスラム組織ハマスは103日、米国のドナルド・トランプ大統領が929日に発表した「20項目のガザ和平案」(2025年9月30日記事参照)に対する公式声明をテレグラムで公表した。声明によると、ハマスは「(パレスチナ自治区)ガザ地区での戦闘停止、捕虜の交換、援助の即時投入、ガザ地区占領の拒否、パレスチナ人民の追放の拒否を求めるアラブ・イスラム諸国、国際社会、およびトランプ大統領の努力を高く評価している」と表明した。その上で「現場の交換条件が整えば、イスラエル人の全ての人質を解放する」と述べ、交換方式はトランプ大統領の提案に基づくとした。さらに、仲介者を通じた詳細な協議に即時応じる準備があるとした。

ガザ地区の統治については、「パレスチナの民意とアラブ・イスラム諸国の支援に基づき、パレスチナの独立を支持する技術官僚(テクノクラート)に引き渡すことにあらためて合意する」とした。一方、ガザ地区の将来やパレスチナ人民固有の権利に関する諸問題については、「パレスチナの包括的枠組みの中で議論されるべきで、ハマスはこれに参加し、責任をもって貢献する」と述べた。

ハマスの声明を受けて、トランプ大統領は104日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、「ハマスは持続的な和平に向けて準備ができていると信じている」と投稿し、イスラエルに対しガザへの爆撃の即時停止を求めた。

画像 ハマスの声明に対するトランプ大統領のトゥルース・ソーシャルでのコメント画面

ハマスの声明に対するトランプ大統領のトゥルース・ソーシャルでのコメント画面

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は5日、国民向け演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「非常に大きな成果の目の前にいる」と述べ、「仮庵祭(スコット、注)の期間中に、生存者と犠牲者を含む全ての人質の帰還を発表できることを願っている」と述べた。さらに、「(計画の)第1段階では、ハマスは全人質を解放し、イスラエル国防軍(IDF)はガザ地区の奥深くにある支配地域を保持したまま再配置する。第2段階では、ハマスは武装解除され、ガザ地区は非軍事化される。これは、トランプ大統領の計画に基づく外交的手段で達成されるか、もしくは軍事的手段で達成される」と強調した。

イスラエル首相府外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは5日、ネタニヤフ首相がロン・デルメル戦略問題担当相を団長とする交渉団に対し、エジプトのシャルム・エル・シェイクで10月6日に開催される協議に出席するよう指示したと発表した。

4日にはテルアビブの「人質広場」で、ガザに拘束されているイスラエル人の人質全員の解放を求める大規模集会が開かれ、翌5日にもIDF本部前などで集会が行われた。

写真 10月5日夜にIDF本部前で行われた集会(ジェトロ撮影)

10月5日夜にIDF本部前で行われた集会(ジェトロ撮影)

(注)ユダヤ教の3大祭りの1つで、イスラエルの民がエジプト脱出後、荒野で仮の住居(仮庵)に暮らした歴史を記念する祝祭。2025年は10月6日から13日まで行われる。

(中溝丘、イバン・ステシェンコ)

(イスラエル、パレスチナ、米国、エジプト)

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