2025年と2026年の成長率を4.1%と予測、デジタル政府への道筋示す世界銀行経済モニター

(マレーシア)

クアラルンプール発

2025年10月09日

世界銀行は10月7日、「マレーシア経済モニター(2025年10月)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、マレーシアの2025年のGDP成長率を4.1%と予測した。前年の5.1%成長からは鈍化するも、前回予測(3.9%)から0.2ポイント上方修正した。マレーシア政府による2025年の成長予測4.0~4.8%(2025年8月22日記事参照)の下限に近い見通しだ。

世界銀行は、2025年上半期に為替高や世界的な需要減退で輸出全体が鈍化する一方、電気電子分野では予想以上の力強さを見せたことから、上方修正に至ったと説明。賃金上昇や政府の支援策が消費を下支えし、内需も堅調だったと分析した。一方、米中経済の変化に対する高い感応度、企業の設備投資への慎重姿勢、電気電子分野における競争力低下、低調な国内イノベーションなどが2026年の成長を抑制し、同年の成長率も4.1%にとどまると見込んだ。

GovTech改革の現場と課題を可視化

今回のモニターで世界銀行は、「デジタルの力を利益へ:行政の生産性向上を促すDXの力」をテーマとして取り上げた。2025年10月2日にクアラルンプールの国立銀行博物館で実施した発表会で、コメントを寄せたアミル・ハムザ・アジザン第2財務相兼経済相代行は「マレーシアは、マダニ経済政策と第13次マレーシア計画の下で、経済構造改革を着実に進めつつある。世界銀行が今回分析テーマに据えた行政のデジタル化(GovTech)も、高所得へ移行する上での重要なツールだ」と指摘した。

世界銀行が今回、マレーシア国内の28省庁約1万6,500人の公務員を対象に調査したところ、約半数がデジタル人材不足を感じていることが明らかになった。人材確保に課題を抱える割合は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の旗振り役であるデジタル省で64%、経済省で54%に達した。その背景には、キャリアパスの不透明さや職場環境の整備不足がある。人工知能(AI)ツールの導入は進んでいるものの、訓練不足や管理職の受け入れ姿勢の弱さが生産性向上の障壁との見方がある。また、GtoC、GtoB、GtoGサービスのデジタル化は進んでいるものの、連邦政府と地方政府、大企業と中小企業との間に利用率の格差があるのも課題だ。

世界銀行は、今後、マレーシアがGovTechを推進するに当たり、4P(Platform:基盤、Policy:政策、People:人材、Participation:参画)の観点から、制度整備、人材育成、市民参加型の制度設計を強化し、包摂的かつ信頼されるデジタル政府を構築していくことを提言した。

写真 レポートを発表する世界銀行担当者ら(左)とアミル・ハムザ第2財務相兼経済相代行のメッセージを視聴する参加者(右)(ともにジェトロ撮影)

レポートを発表する世界銀行担当者ら(左)とアミル・ハムザ第2財務相兼経済相代行のメッセージを視聴する参加者(右)(ともにジェトロ撮影)

(吾郷伊都子、戴可炘)

(マレーシア)

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