フランスの制作・配信大手カナル・プリュス、南アのマルチチョイス買収
(フランス、南アフリカ共和国、アフリカ)
パリ発
2025年10月02日
フランスの有料コンテンツの制作・配信企業大手のカナル・プリュス(CANAL+)とアフリカ最大の有料テレビ事業者のマルチチョイス・グループ(MultiChoice Group、本社:南アフリカ共和国ヨハネスブルグ)は9月22日付の共同プレスリリースで、同日、カナル・プリュスによるマルチチョイス・グループの全ての発行済み普通株式の取得に関する無条件の公開買い付けの実施を発表した。これにより、カナル・プリュスはマルチチョイス・グループに対する実質的な支配権を取得した。プレスリリースでは「この買収は、カナル・プリュスにとって過去最大の取引で、世界的なメディアエンターテインメント企業としての地位を確立することになる」とし、「統合後のグループは、アフリカ、欧州、アジアの約70カ国で4,000万人以上の加入者を抱え、約1万7,000人の従業員を擁することとなる」と説明している。
カナル・プリュスは既にアフリカのフランス語圏に進出して業界トップの地位を築いており、この提携を通じて、フランス語圏以外でのマルチチョイスの専門知識を活用し、アフリカ大陸全体でメディアとエンターテインメントのリーダーとしての役割を強化することを目指す。
物流、通信、エンターテインメント産業分野のフランスのコングロマリットのボロレ・グループはカナル・プリュスの筆頭株主として30.4%を保有し、経営の主導権を握っている。同グループは、アフリカではロジスティクス子会社を通じて、港湾建設・管理事業を47カ国で展開していたが、アフリカの港湾建設事業で大規模な贈収賄事件に関わったとして、2018年にバンサン・ボロレ最高経営責任者(CEO)がフランス警察から一時拘束されるなど、同セクターでの事業の困難に直面し、2022年末には同子会社を海運大手MSCグループに売却した(2022年12月3日記事参照)。他方、ボロレ・グループはフランス国内で同グループのメディア業界への精力的な進出と呼応するかたちで、アフリカでもカナル・プリュスを通じてメディア業界への参画を進めていた。今回のマルチチョイスの買収はその一環と言える。
(渡辺智子)
(フランス、南アフリカ共和国、アフリカ)
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