ブラジルのルーラ大統領がトランプ米大統領と会談、追加関税について協議
(ブラジル、米国)
調査部米州課
2025年10月29日
ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は10月26日、ASEAN首脳会合に参加するため訪問していたマレーシアで、米国のドナルド・トランプ大統領と初の対面での会談を行った。両大統領は、米国側が課しているブラジル産品への追加関税について、今後の方針を協議した。翌27日にはブラジルのマウロ・ビエイラ外相、マルシオ・ホーザ開発商工サービス省事務次官らが米国通商代表部(USTR)関係者と会談を行った。
ホーザ事務次官によると、両国の交渉チームは、追加関税による影響を受ける品目に特に焦点を当てて協議を行い、今後も交渉を継続することにした(10月27日付ブラジル大統領府)。
27日付ブラジル大統領府の公式サイトによると、両大統領は今後も交渉を継続することで了承した。ルーラ大統領は自身のSNSを通じて「トランプ大統領との会合の結果に非常に満足している」と述べ、今後の交渉に楽観的な見方も示した。
米国は7月30日、ブラジルからの輸入に対して40%の追加関税を課す大統領令を発令した(2025年8月1日記事参照)。この結果、追加関税率は既存の相互関税(10%)に上乗せされて50%に引き上げられた。米国は、追加関税の根拠はブラジルによる米企業の利益や米国民の人権の侵害などが米国の国家安全保障、外交政策、経済を脅かす緊急事態に当たるとして、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいていると主張し、ブラジルのジャイール・ボルソナーロ前大統領に対する「政治的迫害」がブラジルの法治や人権を脅かしているともした。後者の主張に対し、ルーラ大統領は「正しい国内法手続きに沿ったもので、内政干渉だ」と反論し、両者の関係は停滞していた。
ただ、米国は9月11日、木材パルプとフェロニッケルを10%の相互関税の対象品目から除外した(注)。他方、10月19日付「CNNブラジル」は、8月の米国のコーヒー小売価格が前年同月比で約21%上昇し、追加関税による価格上昇が背景にあると報じた。ブラジルはコーヒーの米国への最大の供給国だが、米国側では現在、ブラジル産コーヒーに50%の追加関税を課している。
(注)メルコスール事務局の統計によると、2024年のブラジルから米国向け輸出品目をNCMコード(メルコスール共通関税番号、上6桁はHSコードと同じ)別に確認すると、輸出額の最も多い品目は、2709.00に分類される原油(米国向け輸出額全体の14.5%)、次いで多いのが、7207.12に分類される鉄鋼半製品(同7.8%)、0901.11のコーヒー(同4.1%)、4703.29の化学木材パルプ(同4.0%)だった。なお、米国の9月11日の大統領令によると、HSコード4703.29.00を含む木材パルプに対応する3つのHSコード(4703.11.00、4703.21.00、4703.29.00)が10%の相互関税の対象外品目に追加された。
(辻本希世)
(ブラジル、米国)
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