IEAが再生可能エネルギーの拡大見通し更新、2030年までに2022年比で導入容量2.6倍
(世界)
調査部国際経済課
2025年10月16日
国際エネルギー機関(IEA)は10月、「Renewables 2025 ― Analysis and Forecasts to 2030」を発表した。この報告書によると、世界の再生可能エネルギーの発電容量は2030年までに約4,600ギガワット(GW)増加し、2022年との比較で2.6倍に達し、世界最大のエネルギー源となる見通し(注1)となる一方、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で合意した「3倍化目標」(注2)には達しないとしている。増加分の約8割を太陽光発電(PV)が占めるとされ、大規模、分散型の双方で導入が拡大する。一方、風力発電については、2025年から2030年にかけての洋上風力の増加容量の予測は140GWとなり、2019年から2024年の成長率を倍以上上回るとしたものの、米国の政策変更や、マクロ経済的圧力、サプライチェーン上の課題によるプロジェクト中止の影響で昨年時点の予想から27%下方修正された。
IEAは太陽光や風力といった変動型再生可能エネルギー(注3)の導入拡大に伴って、多くの国で出力が抑制されており、より需要側の柔軟性を確保した施策の重要性を強調した。
輸送部門では、再生可能エネルギーの利用割合が2024年の約4%から2030年に6%に上昇する見通しだ。また、熱部門では、再生可能エネルギーによる熱消費が2024年から2030年の間に42%増加し、世界全体の熱需要の18%を占めるとされている。建物および産業分野での導入が拡大する見通しという。
また、IEAは、再生可能エネルギー分野がサプライチェーン上の課題に直面していることを指摘している。太陽光発電や風力タービン用の希土類元素については単一国への依存度が極めて高く、2030年まで採掘と精製で特定国に高度に集中した状態が続くと予想した。
(注1)2030年までに発電量の約45%を占め、2024年の9,900テラワット時(TWh)から2030年には1万6,200テラワット時(TWh)に達する予測。
(注2)COP28で130カ国が合意した再生可能エネルギーの設備容量を2030年までに3倍に増やすことを掲げた「グローバル再生可能・エネルギー効率誓約書(global renewables and energy efficiency pledge)」(2024年2月5日付地域・分析レポート参照)。
(注3)変動型再生可能エネルギー(VRE:Variable renewable energy)とは、天候や昼夜によって発電量が変化する再生エネルギーを指す。
(峯裕一朗)
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