中国国務院、国際海運条例を改正、港湾特別料金の徴収など他国の差別的措置への対抗措置を明記

(中国)

調査部中国北アジア課

2025年10月03日

中国国務院は9月29日、「『中国国際海運条例』改正に関する決定」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布・施行した。

本改正では、中国と国際海運関連の条約・協定を締結、または共同参加している国・地域が同条約・協定に反して、中国が当該条約・協定に基づき享受する利益を喪失あるいは損なわせた、または条約・協定の目的達成を阻害した場合、中国政府は、当該国・地域の政府に対し、当該行為の停止および適切な救済措置の実施を要求する権利を有し、かつ関連条約・協定に基づく義務の履行を停止または終了することができるとされた。

また、中国の国際海上輸送業者や関連の補助的事業者、中国の船舶・船員に対する差別的な禁止・制限などの措置を実施または支援・支持する国・地域に対して、関連条約や協定で十分に効果的な救済が得られない場合、中国政府は実際の状況を踏まえて必要な対抗措置を取るとした。

対抗措置には、当該国・地域の船舶が中国の港湾に停泊する場合の特別料金の徴収や中国の港湾への入・出港の禁止・制限、当該国・地域の組織・個人による中国の国際海上輸送関連データ・情報の取得の禁止・制限、中国の港湾への入・出港を行う国際海上輸送事業およびその他の補助的事業の営業の禁止・制限などが含まれる。

米国の中国関係船舶に対する措置への対抗措置との指摘も

今回の改正について、米国の中国関係船舶に対する措置(2025年4月22日記事参照)への対抗措置と指摘する分析や報道もある。

中国船主協会は、「現在、一部の国が海運分野で301条調査を乱用し、中国企業からの港湾費用徴収という差別的な制限措置を実施しようとしているが、中国の全船主はこれに断固反対し、自身の権益を法に基づき保持するとともに、困難を克服し、世界の海上輸送サプライチェーンの安定を保つ」との声明を出した。その上で、同条例改正について、「対抗措置の規定がより充実し、法的手段を通じて中国の海運権益をより有効に保障し、世界の海運業の公平な競争環境を保持できるようになった」として、断固支持を表明した。

香港紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」は、中国の対抗措置は米国船舶に向けられる可能性があるとして、米国籍船舶は中国および香港籍の船舶に比べて大幅に少ないものの、「中国が、米国と関係する船舶の定義を米国企業・投資家からの投資を受けていることや米国での上場、あるいは米国企業からリースを受けた船舶などに広げる場合には、対抗措置の影響が及ぶ範囲は大幅に拡大しうる」と指摘した(「観察者網」9月30日)。

(小宮昇平)

(中国)

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