第3四半期の米自動車販売は前年同期比6.3%増と好調、EV税額控除前の駆け込みなどが後押し
(米国)
ニューヨーク発
2025年10月03日
米国自動車市場の統計を提供するモーターインテリジェンスの発表(10月1日)によると、米国の2025年第3四半期(7~9月)の新車販売台数(暫定値)は、前年同期比6.3%増の415万5,036台となった(添付資料表1参照)。この増加には、9月30日に発動したEV(電気自動車)税額控除撤廃(2025年7月15日記事参照)前の駆け込み需要やパンデミック期間中に積み上がった繰り越し需要など需要の底堅さに加え、在庫状況も改善したことなどが寄与したとみられる。また当初懸念されていた一連の追加関税による大幅な価格上昇がみられなかったことも市場を下支えした要因だと考えられる。自動車調査会社のコックスオートモーティブが発表したデータによると、1台あたりの平均車両販売価格は前年同期比2.0%増、前期比では0.3%増にとどまっている(注)。
部門別にみると、乗用車は前年同期比8.9%減の71万3,049台、小型トラックが10.1%増の344万1,987となった。小型トラックの中でも中型スポーツ用多目的車(SUV)が好調で、全増加台数(24万6,563台)のうち約6割を占めた。
主要メーカー別にみると、増加台数の大きい順にトヨタ(前年同期比15.9%増)、ゼネラルモーターズ(GM、7.9%増)、フォード(8.5%増)となった(添付資料表2参照)。トヨタは中型SUV「グランドハイランダー」、GMは小型SUV「エクイノクス」、フォードは中型SUV「エクスプローラー」などが販売を牽引した。一方、ホンダは中型SUV「パイロット」が落ち込み2.0%減となった。スバルも中型SUV「アセント」などが落ち込み5.8%減だった。
新車販売台数のうち、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)を合わせたクリーンビークル(CV)は前年同期比18.5%増と大幅に伸び、全車に占める割合は12.2%と過去最多になった(添付資料表3参照)。EVメーカーのリビアン、ルーシッドもそれぞれ35.2%増、34.0%増と大きく伸びた。テスラは「モデルY」が四半期では過去最多の11万4,897台に達したが、全体では0.7%増にとどまった。なお、全BEVに占めるテスラのシェアは、ピーク時の2018年第3四半期の84.5%から、現在は39.4%程度までに減少している。
第4四半期以降の販売に関しては、多くの専門家が、EV需要の反動や関税コストの価格転嫁による先細りを見込んでいる。フォードのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は、10月における米国内のEV販売台数が新規販売台数を占めるシェアが5%程度まで落ち込んでも驚かないと述べた(ロイター10月1日)。ロイターによると、税額控除を受けるための駆け込み需要によりシェアが上昇した8月の半分程度の水準にとどまることになる。
また、投資会社ガーバー・カワサキの共同創設者でテスラの投資家であるロス・ガーバー氏は、自身のSNSで「税額控除を活用するための駆け込み需要が、当四半期の業績を大きく押し上げたことは間違いない。実際、路上では新型テスラ車を多く見かけるようになっている。しかし残念ながら、この駆け込みは終わり、冬が近づいてきている」と語った。
なお、GMとフォードは控除プログラムの延長で予測される販売減に対応する姿勢を見せている(ロイター9月30日)。また、関税コストに関して、トヨタブランドの販売責任者であるデーモン・ローズ氏は「自動車業界での一定の価格上昇は起こるとみており、モニタリングしている。しかしトヨタとしては、(価格転嫁において)先行者ではなく、追随者となるつもりだ」と慎重な見方を示した(ロイター10月1日)。
(注)2025年9月のデータは未発表のため、前年同期比は2025年7月、8月の1台あたり平均車両販売価格の平均値を前年同期の平均値と比較した。また、前期比は2025年第2四半期の平均値と比較した。
(大原典子)
(米国)
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