南ア政府、クロム鉱石輸出管理に関するパブリックコメント募集を開始
(南アフリカ共和国)
ヨハネスブルク発
2025年10月10日
南アフリカ共和国のクロム業界の危機を受けて(2025年10月6日記事参照)、パークス・タウ貿易産業競争相は10月3日、クロム鉱石の違法取引を取り締まる措置の一環として、6月の閣議決定に基づき、クロム鉱石の輸出管理に関する措置を発表した。
これを受け、貿易産業競争省は同日、この措置に関するパブリックコメントを募集する通知を発出した。同通知では、電力コストの上昇や、世界的な市場圧力、規制されていないクロム鉱⽯の輸出など複数の制約要因が重なった結果として、クロムバリューチェーンが近年衰退しており、政府と業界関係者による協調的な介⼊が求められるとした。これにより、クロム鉱石の輸出者は輸出前に南ア国際貿易管理委員会(ITAC)に輸出許可を申請することが求められる。許可申請が適切に提出され、その他の要件も適切に満たされている場合、委員会は申請者に輸出許可を発行するという。
当地報道では、クロム鉱石の輸出に25%の課税も検討しているもようだ。ただ、輸出への課税については、高騰する電力コストの低減に向けた財源とする期待の声の一方、「逆効果だ」とする意見もある。
10月8日付「ビジネス・デー」紙は社説で、政府がこうした措置に踏み出したことに一定評価を示しつつも、信頼できる産業政策として機能させることが重要と主張した。不適切な輸出管理は雇用を守るどころか、雇用を空洞化させる可能性もあるとの指摘も含め、透明性を確保しながら運用していくことが求められるとした。
一方、有力鉱業企業のアングロ・アメリカン最高経営責任者(CEO)のダンカン・ワンブラッド氏は10月8日にヨハネスブルクで開かれた会議で「南ア鉱業ブームの失敗は、数十年にわたる政策の不備が原因」と発言した(10月9日付「ビジネス・デー」紙)。この発言は、今回のクロム鉱石輸出管理とは直接の関連はないものの、南ア政府の鉱業政策全般が不信を招いているとして、関係者の注目を集めている。同記事は「2025年鉱物資源開発法案に対する業界からの反発の多くは、法案が探鉱・探査手続きの簡素化と透明性の向上に失敗したことに起因している」とも指摘している。
(的場真太郎)
(南アフリカ共和国)
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