後発開発途上国からの卒業、延期求める産業界と推進する暫定政権
(バングラデシュ)
ダッカ発
2025年10月10日
バングラデシュは2026年11月に、後発開発途上国(LDC)のステータスから卒業する予定だ(2021年12月6日記事参照)。しかし、卒業すれば、LDCであれば対象となる特別特恵関税(原則無税)がバングラデシュの輸出品目に適用されなくなるなど、各種優遇措置を受けられなくなる。そこで、最近、主要な経済団体が暫定政権に対して、卒業の延期を求めている。8月24日には15の団体が「LDC卒業:今後の課題」と題する記者会見を開き、現在予定されている2026年から2032年までの卒業延期を要請したほか、延期によって「輸出品目の多様化や、オートメーションや人工知能(AI)分野の熟練人材の育成、グローバル市場で持続可能な競争力の確保が可能になる」と訴えた。
また、ダッカ商工会議所(DCCI)、バングラデシュ縫製品製造業・輸出業協会(BGMEA)、バングラデシュ医薬品工業協会(BAPI)のトップが10月8日に暫定政権のムハンマド・ユヌス首席顧問と面談し、より良い準備を行うために、LDCの卒業時期を少なくとも3年遅らせるよう促した。BGMEAのマフムード・ハサン・カーン会長はメディアの取材に対し、ビジネスのしやすさとコストに改善の余地があると指摘し、「税関手続きが複雑なため、ビジネスの環境は真に改善されていない。また、銀行の金利は依然として高く、国内企業にとって大きな課題となっている」と述べた(「デーリー・スター」紙10月9日)。同様に、DCCIのタスキン・アフメド会頭は貿易協定の不在や、エネルギー不足、銀行部門の脆弱(ぜいじゃく)性、物流面の課題を指摘した。
他方、ユヌス首席顧問の意志は強い。首席顧問はこの面談で「政府の最優先課題は、他国に依存することなく卒業を果たすことだ。全てのセクターが自立的、かつ持続可能な移行に向けて準備を進めてほしい」と語った。同首席顧問は9月29日に米国ニューヨークでラバブ・ファティマ国連事務次長と会い、国連がバングラデシュのLDC卒業の準備状況評価を1カ月以内に開始し、2026年1月中旬までに終えることに対するコミットメントも確認している。
2026年2月上旬に実施予定の総選挙(2025年8月6日記事参照)で勝利が有力視されるバングラデシュ民族主義党(BNP)のタリク・ラフマン議長代行は9月18日、「バングラデシュはLDC卒業前に具体的な進展が必要だ」と題するメッセージを党公式ウェブサイトで発信した。BGMEAのカーン会長が率いるビジネス関係者らは9月22日にBNP幹部と会い、LDCの卒業延期を求めることで意見を一致させている。
総選挙の実施予定時期が約4カ月後に迫る中、LDC卒業に対する暫定政権と主要政党や主要経済団体の姿勢は異なっており、今後の動きに注目が集まる。
(片岡一生)
(バングラデシュ)
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