フィリピンの対米輸出13.1%減少の見込み、国連開発計画が発表

(フィリピン、米国)

マニラ発

2025年10月06日

国連開発計画(UNDP)は9月18日に発表した報告書「Disruption, Diversification, and DivergencePDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」の中で、米国の相互関税によりフィリピンの対米輸出が13.1%減少すると予測した(注1)。これは、東南アジアの中で、カンボジア(23.9%減)、ベトナム(19.2%減)に次いで3番目に大きな影響となる。同報告書では、米国関税と世界的な貿易政策の変化によって、アジア太平洋地域(注2)の貿易構造が再構築されつつあると分析されている。

同報告書では、米国の関税政策はアジア太平洋地域の貿易依存国に需要ショックを与えると指摘した。特に、小規模で貿易に依存し、代替可能な低付加価値製品に特化した国々は影響を受けやすく、輸出品目や市場が限られているため、外的変動への備えがない。関税の引き上げは、輸出減少や外貨不足、雇用不安を引き起こし、財政や労働市場の制約から政策対応も難しいとした。

とりわけ、米国関税がアジア太平洋地域の貿易に与える影響の推計として、域内では対米輸出総額が6.4%減少すると予測されており、中でも東南アジアは9.7%の減少と最も大きな打撃を受ける見込みだ。そのうち、フィリピンは対米輸出が13.1%減少する見通しだ。米国のドナルド・トランプ大統領は7月22日、フィリピンへの相互関税を19%とすると発表していた(2025年8月18日記事参照)。

グローバル・トレード・アトラス(Global Trade Atlas:GTA)によれば、フィリピンの2024年の国・地域別輸出額は、米国が16.5%を占め最も多く、次いで、日本(14.1%)、香港(13.2%)、中国(12.9%)が続く。そのうち、米国向け輸出を品目別にみると、電気電子機器・同部品、一般機械、動物性・植物性油脂などの輸出が多い。一方、米国の相互関税では、スマートフォン、家電製品、半導体や集積回路などが除外対象となっており、これらは米国の輸出額の約10%を占める。フィリピンでは、対米輸出のうち27%が除外品目に該当し、ASEAN諸国では、マレーシアが39%、ベトナムが28%、タイが26%を占めた。このような選択的かつ予測困難な貿易措置は、世界の貿易システムに複雑かつ不安定さをもたらしているとした。

(注1)関税による価格上昇がもたらす対米総輸出の予想減少を推計したもの。

(注2)ここでのアジア太平洋地域は36カ国。詳細は、報告書(既出)を参照。

(西岡絵里奈、アギラー・パールホープ)

(フィリピン、米国)

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