拡大する長期介護市場に注目、ジェトロが高齢者産業セミナー開催

(マレーシア)

クアラルンプール発

2025年10月30日

ジェトロは10月10日、「マレーシアにおける高齢者産業の概要及び政府の動向」と題するセミナーを開催した。マレーシアの高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は2021年に7%を超え、2030年には15%に達する見込みで、「高齢社会」へ移行すると予測されている。政府は第13次マレーシア計画で、長期介護(LTC)を新成長分野に位置付け、介護施設整備や人材育成を推進している。外国企業にとっても、新たな投資機会の広がりが期待される。

今回のセミナーでは、ジェトロ中小企業海外展開現地支援プラットフォームのコーディネーター 岩田真宜氏が登壇し、介護施設関連の法制度や参入時の留意点を解説した。また、高齢者ケア施設を統合的に管理する「高齢者向け民間医療施設とサービス法(Private Aged Healthcare Facilities and Services Act 2018)(2018年法第802号)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」が既に施行されており、運用に向けた詳細規則の策定が現在進められていることを紹介した。同法のポイントは、マレーシアの高齢者介護を伝統的な「家庭まかせ」から「制度として管理する」段階に進めるための制度整備だ。品質や安全を高めるため、施設運営にはこれまで以上に明確な基準と責任が求められるようになったと同氏は説明した。また、スランゴール州を中心に進む「ケアエコノミー」形成政策や、情報通信技術(ICT)を活用した介護支援技術の導入動向にも触れた。

セミナーでは続いて、日本の介護ノウハウを基に、海外で施設運営や人材育成を支援するアシルテックの井澤圭一代表取締役が同社のマレーシアでの事業展開事例を紹介した。日本式介護モデルを基盤として、イポー州での老人ホーム運営支援や、北海道の専門学校との連携による介護人材育成の取り組みを説明した。井澤氏は「日本で培った介護のノウハウは、制度整備が進むマレーシアで十分に生かせる」と指摘した。

参加企業からは、「日本企業の関心の高まりをうれしく感じており、今後は両国の協力を通じて、マレーシアの高齢者サービスをより良くしていきたい」との声が寄せられた。

写真 井澤氏(右)による講演(ジェトロ撮影)

井澤氏(右)による講演(ジェトロ撮影)

(近藤皐平)

(マレーシア)

ビジネス短信 a08121612c7411a9