9月の米平均新車価格は初の5万ドル超、高価格帯やEVが牽引と分析

(米国)

ニューヨーク発

2025年10月16日

米国の自動車調査会社コックスオートモーティブが10月13日に発表した9月の米国新車平均取引価格(ATP、注1)は5万80ドルと、初めて5万ドルを突破外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。前年同月比で3.6%上昇し、新型コロナウイルスのパンデミック明けの2023年春以来で最大の伸びとなった。同社は、関税コストの圧力は一部あるものの、高価格帯車両と電気自動車(EV)の販売が好調だったことや、メーカーが提供するインセンティブ(割引額)の増加による販売条件の変化など、複数の要因が重なった結果だと分析している。

同社によると、取引価格が7万5,000ドルを超えるモデルは前年同月の50車種から60車種超に増加し、販売台数は前年比約6.0%増と伸びた。しかし、伸び率は市場全体の6.6%増に比べてやや小さいため、高価格帯モデルの取引単価の上昇が全体を押し上げたとみるのが妥当だ。また、EVに関しては、バッテリー式電気自動車(BEV)のATPが5万8,124ドルとなり、前月比3.5%、前年同月比3.2%(注2)上昇した。さらに、EV税額控除が9月30日に撤廃される前の駆け込み購入を背景に、価格帯が高いEVの販売台数が前年同月比46.4%増、全車に占める割合も過去最大の11.9%と大幅に増加したことから、全体価格の押し上げ要因の1つになったと考えられる。加えて、メーカーが提供する割引(インセンティブ)はATPの7.4%(約3,700ドル)に拡大し、年内最高水準を記録した。

同社エグゼクティブアナリストのエリン・キーティング氏は「関税が新たなコスト圧力をもたらしているが、9月の価格上昇は主に高級車とEVによるものだった」と指摘し、「今日の市場は裕福な世帯が支えており、最も売れているのは6万5,000ドル超のピックアップトラック」と述べた。関税コストについては、ロイターが9月18日付で専門官の意見として、1台当たり2,300ドルに達する可能性を報じた。さらに、10月10日には自動車運搬船に対する入港料算定基準の引き上げが発効する(2025年10月14日記事参照)など、周辺コストの上昇も懸念されている。こうしたコスト増の一部は既に高価格帯車両を中心に織り込まれている可能性もあり、今後はより精緻な影響分析が求められる。

(注1)メーカーが提供する割引(インセンティブ)は含まない。

(注2)前年同月の価格は、コックスオートモーティブによる2024年10月発表データに基づく。

(大原典子)

(米国)

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