エジプトが熱間圧延鋼板セーフガード発動、公聴会では日本企業の輸出への影響に懸念

(エジプト、日本)

カイロ発

2025年10月07日

WTOセーフガード委員会は9月10日、エジプト政府からの申し立てにより、同国に輸入される熱間圧延鋼板(HRC/HRFS、注)に対し、原産国にかかわらず、CIF価格の13.6%の暫定セーフガード関税が一律に課されると通知した。課税期間は9月14日から2026年4月1日まで。これについては、エジプト産業運輸省で9月30日に公聴会が開催され、同国や輸出国の鉄鋼メーカー、商社、各国大使館などから約50人が出席した。

エジプト政府によると、対象製品のエジプトへの輸入額は、2021年と2024年を比較すると、約2.2倍になり、2023年と2024年の比較では、31%増加した。国内産業は2023年と2024年を比較すると、販売量が10%減少、市場シェアが21%減少、生産量が6%減少、工場稼働率が6%低下、労働者数は9%減少、純利益が70%減少するなど、深刻なダメージを受けているとした。

公聴会では、出席した日本企業から、「日本原産品の輸入額は僅少なのに、なぜエジプト政府は原産国にかかわらず、一律のセーフガード関税を課すのか」といった質問が出された。日本のメーカーや商社は今後、エジプト国内で製造していない熱間圧延鋼板製品を特定し、そのHSコードの製品については、セーフガードを撤廃するようエジプト政府に求めていくとしている。

エジプトの製鉄所には電炉はあるが、高炉はないため、国内ユーザーの求めるスペックの製品は輸入に頼らざるを得ないケースが多い。今回のセーフガード発動により、自動車、家電などのメーカーや、建設業などの調達コストが上昇することになる。

エジプトとEUの間には貿易協定が存在しているが、EUも9月26日、エジプト原産の一部の熱延鋼板に対するアンチダンピング(AD)関税措置を発動し、11.7%の従価関税が課されることとなった(2025年10月1日記事参照)。

(注)次のHSコードの製品がセーフガード課税対象:7208.10、7208.25、7208.26、7208.27、7208.36、7208.37、7208.38、7208.39、7208.40、7208.51、7208.52、7208.53、7208.54、7208.90、7211.14、7211.19、7225.30、7225.40、7226.91、7226.99

(西澤成世)

(エジプト、日本)

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