タイ中銀、新総裁就任後初の金融政策委員会で政策金利据え置き

(タイ)

バンコク発

2025年10月10日

タイ中央銀行(BOT)は10月8日、金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を1.50%に据え置くことを5対2で決定PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。今回は、10月1日にBOT総裁に就任したウィタイ・ラッタナーコーン氏(2025年7月24日記事参照)が取りまとめる最初のMPCだった。ロイターによる事前のエコノミスト調査では、26人中20人が利下げを予想していたが、予想に反する結果となった。

BOTの発表によると、2025年と2026年のタイ経済は、前回の見通し(2025年6月)に近い水準の成長が予測されている。2025年前半は、製造業の前倒し生産と米国向け輸出により、見通しどおりの成長となったものの、後半から2026年にかけては、米国の貿易政策の影響により、成長が鈍化することが予測されている。足元で減速している観光業は徐々に回復し、民間消費も政府の景気刺激策の支援によって緩やかに拡大すると見込まれている。

総合インフレ率は、世界的な原油価格の下落や、好天による生鮮食品の供給増加などにより、2025年に0.0%、2026年に0.5%まで低下することが見込まれている。ただし、デフレリスクは低く、大半の財・サービス価格は上昇または横ばいを維持しており、2027年初頭には目標レンジに戻ると見込まれている。

全体的な信用供与は、融資需要の減少と、特に中小企業や低所得世帯に対する金融機関による慎重な融資姿勢により、引き続き縮小している。また、通貨バーツは一部の期間でドルに対して上昇し、一部の輸出業者に影響を与えたとした。

こうした状況を踏まえ、MPCは経済回復を支えるために金融政策は緩和的であるべきと評価しており、2人の委員からは、金融環境を経済回復に適した状態に保ち、中小企業や脆弱(ぜいじゃく)な世帯の流動性を支援し、債務負担を軽減するために、さらなる金融緩和が必要という意見が出された。一方、大方の委員からは、これまでの政策金利引き下げ効果の経済への波及が続いており、限られた政策余地の中で金融政策のタイミングと効果を重視すべきとの意見が出され、政策金利を維持すると判断した。

(野田芳美)

(タイ)

ビジネス短信 7a1573f81ba1d0e1